作成者別アーカイブ: 原田 敬美

ミャンマーの地震被害と救援物資配送の監査

 3月28日にミャンマーで発生した大地震。1週間以上経過し死者3145人、負傷者4589人と報道。内戦が続き、各国からの救援物資が必要な場所、地域に届くのが困難な状態とのこと。地震大国の日本ですから他人事でありません。

 思い出すのが2004年12月に発生したインドネシア沖の大地震。各国から支援物資が届けられました。その時、アメリカの大手監査法人プライス・ウォーターハウスはボランティアで被災地に入り、各国からの救援物資が適切に配送されているか「監査」活動をし、不自然な、また、不公正な配送に対して厳しい意見、改善勧告をしたとのことです。(記憶では)例えば、某知事公邸に数千人の避難民がいるから救援物資を数千人分送ってほしいとの連絡に対し、「知事公舎にそんなに多くの避難民が滞在しているはずがない」と判定し要求を取り下げ、適切と判断した数量の救援物資を送ったとのことです。

 ミャンマーの救援活動で適切に救援物資が配られているか、本来であれば監査法人なりが監視、監査するべきでしょう。残念ながら内戦状態とのことで、力による奪い合い、あるいは、政権を握る軍事政権側が相当数を獲得する可能性があります。

英国建築専門誌25年度審査員発表

Dezeenという英国の建築、デザインの専門誌があります。25年度の賞の審査員が発表されました。1人目はイタリア人建築家でカルロ・ラッティ氏、2人目はスウェーデンのデザイナーのソフィア・ラーゲルクビスト女史、3人目はイギリス人インテリアデザイナー、マシュー・ウィリアムソン氏、4人目はムンバイで活動するインテリアデザイナーのサラ・シャム女史(おそらくインド系)の4人です。女性2人、国籍は4か国、職業は建築デザイン、インテリアデザインと多様です。日本では審査というと大学教授が就任することが多いです。明治時代からの伝統、日本人にある意識か、大学教授は中立、公正、専門性があるなど(実際は偏った審査も多いと聞きます)の理由と思います。しかし、欧米では大学教授は大学での教育研究活動に専念しなければならず、また、専門性の高い人材は民間にもいくらでもいるという考えでしょう。多様な審査員であれば審査は公平、公正に維持されると思います。日本での審査方法も大きく変わるべきです。

ローザンヌ国際バレー日本勢3人入賞

2025年2月10日の報道です。スイスのローザンヌ国際バレーコンクールで日本人が3人入賞したとのことです。若い日本人バレーリーナの活躍に拍手を送りたいと思います。こうした国際コンクールで日本人含め外国人などが入賞するということは「審査が公平、公正」という証でもあります。日本の文化芸術の審査では黒い噂も耳にします。古くは小澤征爾がパリの指揮者コンクールで優勝し、また、比較的最近では辻井伸行がテキサスのクライバーンコンクールで優勝しました。審査員から最高の評価を受けました。審査員は国籍、人種に関わらず「いいものはいい」と公正に評価した結果です。日本でのコンクールで日本の審査員もそうした覚悟を持って審査していただきたいと祈っております。

フジTV問題から働き方改革

欧米の働き方から見てのフジTVの問題です。

1 5時以降はプライベートタイム:1971年スウェーデンの設計事務所でインターンとして働きました。また、1975年ライス大学の研究所で働きました。5時になると、職員は脱兎のごとく帰宅しました。得意先の接待があるから「女性陣は接待係として付き合え」、「日曜日のゴルフ接待に参加せよ」ということは一切ありません。

2 家族を大事にしろ:1980年代、私の後輩が某商社から英国石油に転職しました。家族を連れロンドンに移住しました。彼はロンドン到着後ただちに会社を訪問。すると、幹部から「奥さんが引っ越しの整理、子供の入学手続きなどで大変だろう、一週間出社しなくてよい」と家族を大事にしろと逆に叱られたとのことです。

3 社交で酔っぱらうのは厳禁:留学時代、及び、その後の国際会議に参加した経験から、お酒はマイペースで、注いだり注がれたりの習慣はありません。レセプション会場に酔っ払いはいません。酔っぱらうと「あいつはダメ」と烙印が押されます。日本での社交は、酔っぱらうことが良いことみたいに見られているようです。「まー一杯、どうぞ」と酒宴が始まります。私は港区長時代「原田は酒を飲まないから(酔っぱらわないから)信用できない」と言われました。私には理解不能。日本の社交の席では酔っ払いをよく見かけますが、女性にとり不快、危険な場所となり、女性は参加しにくくなります。

4 問題があれば何でも議論する:アメリカの組織で、何か問題があると年齢、キャリアに関係なく水平志向で自由に意見交換し、問題解決をします。これは組織が発展する大きな要因です。そうした議論の場を何回か目撃し、私自身も議論の輪に参加し、発言を促されたことがあります。 

私の健康の主治医(M先生)は慶応大学医学部出身ですが、回診でただ教授の診断結果を聴くだけ、(うっかり発言すると教授から生意気な奴と遠ざけられたそうです)、アメリカの大学病院に留学したらその日からカンファレンスで「君はこの患者を診て、カルテを見てどう思う」と発言を求められたそうです。

港区長時代、庁議(部長と三役が全員出席する最高意思決定会議)を毎月1回開催しましたが、区長が議長役で、誰も発言しないことに驚きました。ある時から区長自ら議事録を作成しました。すると部長達はそれを勤務評定と思ったのでしょう、手を挙げ発言するようになりました。また、部長たちは原田が公正な人事評価をすると、逆に私を評価したのでしょう。それまでは余計な?発言をして区長に嫌われ左遷させられたら困るから黙っていようという意識があったのでしょう。

フジTVはじめ報道機関はニュース番組やニュース解説で偉そうにお説教調で視聴者に向かい発言しますが、彼らのやっていることは幼稚園児以下です。

英国建築専門誌の賞の審査体制、4人の民間の建築家

Dezeenというイギリスの建築の専門誌の賞の審査員が発表されました。日本ですと審査員は大学教授を中心に構成されることが多いですが、欧米では異なります。欧米の大学教授は授業と研究に専念しなければいけない義務があり、外の仕事にはあまり参加できません。日本では大学教授は能力があり中立だと思われ、様々な場面で審査員になっています。実態については疑問符が付きます。今年のDZ誌の審査員は以下の4名です。女性2人、黒人、アジア系の方もいます。Crawford女史は白人女性でインテリア審査部門の担当。Teo Yangは韓国人、住宅や商業施設部門の審査の担当。Benjamin Hubertはイギリス人男性、デザイナー、ナイキやグーグルのデザインなどを担当しています。Orajumoku Adenowo女史はナイジェリア人建築家、公共施設や複合施設の設計をしています。多様性に富んだ審査員体制です。日本でも採用すべき審査体制です。

トランプ政権住宅都市開発長官ターナー氏就任多様な経歴

私の専門領域の役所、アメリカ住宅都市開発省(HUD)の長官の人事が連邦議会上院で55対44で承認されました。黒人のスコット・ターナー氏です。経歴は多様で日本の政治家には見られない内容です。前職はテキサス州の州議会下院議員、トランプ氏の支援者です。就任前の連邦議会公聴会で氏は「アパート、一戸建て住宅、コンドミニアム(いわゆるマンション)、工業生産住宅などどんどん造る」と発言しました。52歳。日本の大臣と比較し若手です。その前はプロ、フットボールの選手で、ワシントンのコマンダーズ、サンディエゴのチャージャーズ、デンヴァーのブロンコスで活躍しました。氏は奨学金を得てイリノイ大学(名門大学の一つ)で学び、大学スポーツ選手として活躍しました。フットボールばかりでなく、陸上短距離の選手としても活躍しました。

日本のスポーツと異なるのは、フットボールもやり陸上もやりです。複数のスポーツをやることで効果があると思います。また、人間性の幅も広がります。日本のスポーツ界も参考にすべきです。

アメリカの大学のスポーツ選手は文武両道で、成績が悪いと奨学金をカットされたり、スポーツ活動を禁止され学習に重点を置くように指導されます。これも日本の大学スポーツと異なります。日本の大学スポーツは参考とすべきです。

このような経歴の長官と日本の政治家(二世、三世が多く、また、多様性に欠ける方が多いです)が議論した際、議論がかみ合わない、勝てないと思います。日本の政治家ももっと多様性、知識、体力を増強すべきです。


女子医大理事長不祥事

2025年1月13日東京女子医大理事長岩本絹子女史が背任容疑で逮捕されました。少し前、日大理事長だった田中氏が逮捕されました。欲の皮のつっぱた人物であり、その取り巻きも問題人物たちでした。組織の統治不全でした。世間から見れば、医者、教授、ましてや大学の学長、理事長となれば世間から尊敬、敬意を最大限払われるポストです。岩本氏も田中氏も実態は幼稚園児以下の社会的常識に欠けた人物だったということです。周囲の理事会、教授会も社会の常識が通じない幼稚園児以下の人物だったということです。

欧米の大学では、教授人事は公募が原則、また、自校出身者を採用しません。例えばハーヴァード大学の教授の8割は他大学出身者です。学部長、大学院長、学長も公募です。他から適任者を選びます。一昨年までハーヴァード大学学長はハイチ出身の黒人女性、コロンビア大学学長はエジプト出身の女性です。私が留学したライス大学建築大学院ですが、90年代大学院長に就任したラース・リラップ氏はスウェーデン人、ハーヴァード大学大学院卒、その後カリフォルニア大学バークレー校の教授に就任、ライス大学建築大学院長の公募に応募し選ばれ大学院長に就任しました。氏から聞いた話です。「大学院長のポストに60人の応募があった。」とのことです。ラースの前はイギリス人のアラン・バルフォー氏、その前はイギリスの著名建築家ジェイムス・スターリング氏が大学院長でした。独裁者の存在を認めない、という大学、組織の意思表示でもあります。1954年コロンビア大学創立200年祭でグレイソン・カーク学長が今後の高等教育、コロンビア大学のヴィジョンについて講演しました。そのポイントは、①学歴のエスカレーション、②生涯学習、③コミュニティ教育です。今日の高等教育の状況は、グレイソン・カーク氏が語った通りになっています。従前、大卒(学士)で十分だったのが、産業の高度化などで修士号が必要となる、従前、修士で十分だったのが博士号が必要となる、それから、学習は生涯に亘り必要となる、さらに、地域での学習活動がひつようとなる、との内容です。

日本でも大学の学長、理事長に就任する方は、自分のヴィジョンを明確に語る必要があります。日本の大学では年功序列か利権、名誉を求め学長、理事長になる方がいるのは残念です。

早稲田大学ビジネススクール・革新的な組織づくり

早稲田大学で商議員を仰せつかっております。12月開催された商議員会で、田中総長の学事報告の後、最近設立された商学部のビジネススクール(大学院)について教授の入山章栄氏の講演がありました。早稲田のビジネススクールは欧米の大学のような組織運営で驚きました。日本の大学改革、グローバル化などの変革の中、意義ある大学改革です。ビジネススクールの創設、運営は田中総長、また、先代の改革派の某商学部教授の改革マインドの結果です。

まず、ビジネススクールの教授陣は多様です。これまで早稲田大学の教授はほとんど母校出身者で固められています。東大含め日本の大学はほとんど母校出身者の教授がほとんどです。欧米の大学は教授の8割は他大学出身者で多様性が確保されています。早稲田のビジネススクールの教授は、具体的には民間の有名なコンサルティング会社のトップ経験者や他大学からのスカウト組です。ちなみに入山氏は慶応大学卒、民間企業に就職後アメリカのビジネススクールに留学し、その後ニューヨーク州立大学の教授に就任、その間、早稲田大学の改革派の教授からスカウトされたそうです。従来、現在も日本の大学教授就任のプロセスは教授のお手伝いなどした弟子を教授が推薦する閉鎖的な人事です。欧米では公募、第三者委員会が採用を決めます。

次に、学生の多様性です。女性も多くいます。留学生も多くいます。年齢の幅も広がっています。企業で中堅幹部として仕事している方が将来のキャリアアップを目指し入学しています。

日本の大学教授は終身雇用ですから、教授が権力を握り、人事権を握り、と閉鎖的な組織です。そうした中、早稲田大学商学部は新たにビジネススクールを創設し、従来と異なる大学運営を始め、高い評価をされているそうです。ビジネススクール設立にあたり、学内で相当な抵抗勢力(従来型のしがらみ型の教授陣)(マスコミなどで教授は社会批評をしますが実は自分たちが守旧派で抵抗勢力です)がいて大変だったそうです。こうした従来型の教授陣を場外に追いやらないといくらたっても女性教員は増えません。日本の大学は30歳くらいで指導教授の覚えめでたいと助手に採用され、70歳の定年まで終身雇用です。変化は期待できません。自分を推進して下さった教授に異なる考えを述べることはできません。早稲田のビジネススクールは外部から教授を招聘する仕組みで、50歳くらいの生きのよい専門家を招聘し、定年までそれほど長くありませんから教授の回転率も良いとのことです。

入山氏曰く、従来の仕組みを変えるのは抵抗勢力が多く大変、新しい組織を作るのが最も早い改革の方法、とのこと。私も同感、教授人事は第三者機関にゆだねるべきです。

ハーヴァード大学学長は昨年までハイチ出身の黒人女性、他大学出身者、コロンビア大学学長はエジプト人女性、ロンドン大学教授だったのをスカウトされました。お二人とも中東問題の処理の都合で昨年退任したのは残念。

田中総長は、早稲田卒業後アメリカ、オハイオ州立大学で10年間勉強しました。体育会の空手部出身、従来の総長と異なる経歴です。早稲田大学ビジネススクールの発展を期待します。

話変わり、教育による経済活性化です。アメリカには100万人の留学生がいます。一般教養大学(リベラルアーツ)で年間授業料500万円以上、メディカルスクール、ロウスクール、ビジネススクール、アーキテクチャースクールなどの専門大学院は年間授業料が700万、800万円です。生活費を含め一人年間1000万円と想定すると、アメリカが留学生から得る収入は単純に10兆円となります。これは日本の国家歳入の10%です。高度な教育、研究、科学技術などが日本経済を支える仕組みを作らないといけません。そこには、女性研究者、女性技術者の参画が必要です。さらなる余談ですが、日本の政治家の意識が低いですから、なかなか女性研究者を増やし、女性活躍、技術研究立国を目指すと発言する方はほとんどいないのが残念です。

イスタンブール、副都心アタシェヒル市市長と面談

10月8日午後イスタンブールの副都心のアタシェヒル市の市長と面談し、港区の都市開発、東京の防災まちづくりの体験談などをお伝えしました。5日、6日にギリシャのテッサロニキ市で開催されたバルカン地域の建築学会で「東京の防災まちづくり」について小論を発表したところ、トルコ人の教授(女性)が私の小論に関心を持って下さり、「アタシェヒル市の市長を知っており、44歳と若い市長なので原田さんの体験談を伝えてほしい」と要請を受けた次第です。

日本の市庁舎と異なるのは、入口は空港のゲートと同じでセキュリティチェックがあることと武装した警察官が警備していることです。市長室の広さは港区長室の倍くらいの面積、市長のデスクの背後には建国の父であるアタチュルクの肖像写真が掲示されていることです。トルコではどこに行ってもアタチュルクの肖像写真が飾ってあります。

幹部職員を紹介されましたが、また、驚きは副市長が若い女性で、かつ、建築職であることでした。日本の市役所にはない人事と思います。アタシェヒル市は東京でいうと新宿区のような性格で、中心部には超高層の事務所や住宅が林立し、一方周辺には耐震上、防災上問題のある住宅が密集していることです。市長の頑張りを期待します。

ギリシャ、テッサロニキ市でバルカン地域の建築学会大会に参加

10月5日、6日、ギリシャのテッサロニキ市でバルカン地域の建築学会が開催されました。主たるテーマは防災、震災対策です。今年の初め知人の教授から論文の審査委員の依頼がありました。テーマが防災なので私も東京の防災まちづくりについて論文投稿することとしました。防災分野をインテリア、建築、都市計画の観点から様々な研究論文の発表がありました。驚きは女性研究者の発表が圧倒的に多かったことです。事務局はテッサロニキ市にあるアリストテレス大学の教授やお手伝いの学生たち。お手伝いの学生も女子学生が圧倒的に多かったです。場所柄バルカン地域の国々から研究者が参加しました。

テッサロニキ市はギリシャにあってマケドニアに近く、アレキサンダー大王はこの近辺の出身だそうです。また、近代トルコの建国の父であるアタチュルクもテッサロニキ出身だそうです。古代の建築遺跡が多く地元の教授の案内で見学しました。

地域の様子を知るために市バスに乗り移動しました。市バスの料金(90セント、150円程度)、街の風景、乗客の様子など観察しながら市バス移動を楽しみました。古都の観光地であること、学生街であることなどから大勢の観光客で街はあふれていました。

大会中、ルーマニアの教授から来年はルーマニアが事務局なのでぜひルーマニアに来てほしいと声を掛けられました。また、トルコのトラキヤ大学(トルコの古都エディルネ市)の教授から来春トルコの著名建築家ミマール・シナンに関するシンポジウムを開催するのでリモートでよいから基調講演してほしいと依頼がありました。

イスタンブールから乗り継ぎでテッサロニキ空港に到着しましたが、日本人のツアグループを2つ見かけました。お声かけしたらこれからクルーズ船で地中海クルーズとのこと。私もいずれはクルーズ船に乗り地中海クルーズしたい思いでした。