カテゴリー別アーカイブ: 建築設計

アメリカ建築家協会会長に黒人女性建築家就任

ニューヨークタイムズの23年11月11日記事で「黒人女性建築家が頑張っている」と紹介されました。アメリカ建築家協会(AIA、アメリカ唯一の専門家組織で、かつ、建築家の試験機関でもあります)の会長に12月からキンバリー・ダウデル女史が就任。40歳。現在大手設計事務所HOKの幹部社員です。40歳の黒人女性がAIA会長に就任するのは大ニュースです。AIA会長は現、前、次期、次次期と4代にわたり女性です。次次期予定者はアジア系女性です。

AIAは166年の歴史があり、白人男性が圧倒的に多い組織ですが、大きな変革が起こりつつあります。アメリカでアフリカ系は13.6%、建築家の1.8%が黒人。そういう点で黒人建築家は極めて少数派です。12万人の建築家のうち20%が女性。0.5%が黒人女性建築家。とりわけ黒人女性建築家は圧倒的に少数派です。

普通の投票なら勝てませんが、会員が社会の動きを認識し黒人女性を会長にしたのでしょう。2年後はアジア系女性が会長です。40歳と言う年齢、黒人、女性がAIAの会長に就任することは革命的なことです。大きく社会が変化しつつあることを意味します。日本では大学も政治も企業も全く変化がありません。特定勢力が既得権にしがみついています。数年後、日本の建築学会など多くの学会で40代の女性が会長に就任することを期待しています。ちょとづつではだめです。一気に変える必要があります。明治革命、戦後の革命も一気に社会を変えました。戦後の新しい地方自治法を作った、後年東京都知事になった鈴木さんは先輩がレッドパージでいなくなり30代で地方自治法を作りました。仕事は実質30代40代が担っています。女性の皆様、特に、若手の助成に頑張っていただきたいと期待します。

ニューヨーク市ロサンジェルス市、公開設計コンペ

ニューヨーク市とロサンジェルス市の公開設計コンペのニュースです。少し前の資料を見つけました。2000年12月30日Architecture Daily誌によりますと、ニューヨーク市役所住宅局はアフォーダブル(低家賃住宅)の1万㎡規模の設計コンペ内容を発表しました。驚きは、少数派や女性が経営する設計事務所の参加を呼び掛けていることです。日本、東京都などでこうしたコンペはありません。

2000年12月初旬、ロサンジェルス市は低所得者住宅の国際コンペを実施、締め切りは翌年の2月末。世界中どなたでも参加できます。日本、東京都などではこうしたコンペはありません。2000年3月にはロサンジェルス市は街路灯のデザインを実施、市長声明で「世界中の建築家、照明デザイナー、電気議事の皆様、ぜひ、街路灯のデザインコンペに参加してください。」と自ら呼びかけの発言をしました。世界中から知恵を求める、公正に素晴らしいデザインを選ぶ方法は好ましいです。

日本、東京ではありません。国際コンペを実施する能力、意識はありません。まず英語ができません。日本の業者選定は入札が原則、能力、経験、アイデアなどは審査対象外です。入札は会計法に基づき、価格競争が原則です。さらに制限付きで会社規模、売上高など必須条件の入札制度はいずれWTO(世界貿易機関)から日本、東京都は閉鎖的で設計業務の市場開放をしなさいと勧告を受けることになるかもしれません。

パリを訪問すると、国立図書館、新凱旋門、新オペラ座、ルーブル美術館ガラスの入口、ラヴィレット公園、パリ音楽院などの公共事業は観光名所でもあり多くの観光客が訪れます。全て国際コンペです。新凱旋門はデンマーク人、ルーブルは中国系アメリカ人、ラヴィレット公園はスイス人、オペラ座はエクアドル系のカナダ人です。パリ郊外にあるユニークな造形の市営住宅はスペイン人(実際の設計担当者はロシア人)です。誇り高いフランス人もよいデザインを選ぶために公正なコンペで、外国人であっても最適の建築家を選びます。

私自身、港区長時代、フランス大使館の建替えの設計コンペの審査員を仰せつかりました。審査のプロセスを体験しました。真剣で、熱心な審査でした。フランスで建築家の役割は設計課題を作る建築家、コンペに参加する建築家、応募案の技術評価をする建築家と3つの役割があることを知りました。

昔の話ですが、カナダのトロント市庁舎はフィンランド人、オランダ、ハーグの市庁舎はアメリカ人、ヘルシンキ美術館はアメリカ人と国籍に関係なく良いデザインを選ぼうと世界中に声掛けします。若手日本人建築家も活躍しています。最近のArchitecture Daily誌によりますと、ロシアのノヴゴロドのドストエフスキー劇場の保全の設計コンペが実施されました。中国、上海の広場の設計もコンペで建築家が選ばれました。共産主義の国でも設計者選定はコンペが多いです。

コーネル大学求人広告

DZと言うイギリス系の建築の専門誌に求人広告が掲載されています。その中でコーネル大学の教員の公募広告の紹介です。DZ23年10月号です。デザインと建築技術分野で、助教授、准教授の公募広告です。大学の方針は「これからデザイン・テックの分野、AIの分野に力を入れ、デザインと科学との融合を目指します。コーネル大学は現在変革期にあります。インクルーシブな元気のある大学社会を構築したいと考えています。デザイン学部の狙いは、クリエイティブと批判的な見方、サステイナビリティと社会に衝撃を与えること、デザインと新たな技術開発、都市のデザインと革新的な世界に作り変えることができる能力開発を目指します。このような考え方に賛同する方の応募を期待します。なお年俸は9万ドルから14万ドル。1ドル150円とすると1,350万円から2100万円。日本の大学の教員採用も、このような公募方式で広く広告し、多くの志願者から適任者を採用する方式が日本でも主流になることを祈っています。

イリノイ工科大学(IIT)学科長ヴェネゼラ出身の女性建築家就任

アメリカ建築家協会誌(AIA)9月26日の記事の紹介です。イリノイ工科大学のランドスケープ・都市計画学科長にマリア・ヴィラロボス女史が就任しました。IITはシカゴ市に立地、世界三大建築家の一人ドイツ生まれのミース・ファン・デル・ローエがナチを嫌いアメリカに移住し、IITの大学院長に就任、発展させた大学です。ヴィラロボス女史はIITで初のヒスパニック系の幹部教員です。彼女自身が就任したことで、IITの「イクイティ、正義」を教科内容に反映させることができます。彼女はヴェネゼラ生まれ、2019年IITの教員に就任、2023年准教授に昇格、今回学科長に就任。彼女はシカゴ市の都市計画にも大いに貢献しました。専門領域で様々な受賞歴があります。日本の大学、企業も「イクイティ、正義」を大学経営理念、企業の経営理念に取り入れるべきです。

テキサス大学アーリントン校建築大学院長公募

イギリスの建築雑誌DZの23年10月配信記事にテキサス州立大学アーリントン校の建築大学院長の公募広告がありました。テキサス州ダラス近くにに立地するテキサス州立大学の一つです。学生数4万人です。アメリカ連邦政府から「ヒスパニック系、アジア系アメリカ人、インディアン(先住民族)、太平洋諸島のアメリカ人学生の支援」のモデル大学に指定されています。応募の条件は専門知識と社会常識の2分野です。

一つは専門知識や資格の有無です。専門的資格、経歴、受賞歴などです。革新的な建築・インテリア教育の能力、カリキュラムの改革、組織の発展、組織文化を構築する能力、卓越したコミュニケーション能力が要求されます。

もう一つの条件は社会常識、これは日本では見られない内容です。日本の大学も大いに採用すべきです。不当な差別(ハラスメント、人種、民族、宗教、年齢、性別、性的し好、妊婦、障がい者など)を許さないと言うことの理解、認識が問われています。何らかの障害があれば大学が支援する、と記載されています。企業でも共有すべき内容ですが、日本の大学管理者、経営者がこうしたことを理解しているのか疑問です。日本の大学も公募(形だけでなく本当の公募)を採用すべきです。

日本の大学教員は公募でなく特定の教授からお声をかけていただく人事です。読売新聞10月26日に元上智大学学長の石沢良昭氏の「時代の証言者」で「地方の大学に出張の度にこんな院生がいますから是非使ってやってくださいと売り込みます。」

女性建設労働者を増やすため、アメリカBuildersの記事

アメリカのBuildersという住宅建設の業界紙を読んでいます。10月号に女性の建設労働者を増やすための論説記事がありました。寄稿者は某住宅建設会社の女性社長です。

女性建設労働者が増えつつあります。また、女性建設労働者を受け入れる余地があります、と言う内容です。彼女のコメント概要の紹介です。1 自分が仕事を始めた80年代、女性はほとんどいなかったが、今、女性建設労働者が増えつつある。2 2016年から2021年の間32%増えた、3 建設労働者(管理職含め)の83%が男性で、まだまだ女性が増える余地がある。4 女性の応募者を増やすカギは次のとおり。①女性労働者のための指導員を増やす、②女性労働者が働ける環境を整備する、③フレキシブルな働き方を整備する、④安全を確保する、⑤女性労働者を支える組織を整備する、の5点です。以上5つの鍵は建設分野の女性労働者ばかりでなくあらゆる分野に共通する内容です。

AIA(アメリカ建築家協会)サステイナブルデザインの専門家紹介。多い女性、民間人

AIA(アメリカ建築家協会)誌の10月2日配信の記事です。今の時代重要なサステイナブルデザインの専門家紹介です。10名が紹介されています。内、女性建築家が6名です。また、10名の内、9名が設計事務所勤務の方で大学教授は1名です。日本ですとこの手の専門記事の場合、登場するのは男性、大学教授が圧倒的に多いです。民間に優秀な人材が多くいますが。

30年前、恩師である建築家菊竹清訓氏と大成建設のS社長を訪問した際の会話を今でも覚えています。社長は菊竹先生の同級生、菊竹先生が国際会議の応援を依頼し、社長から即「承知」と回答があった後、面会予定時間の残りの時間を、S社長は母校である早稲田大学建築学科からの学会論文、博士論文の少なさを率直に批判、「わが社の研究所の方が学会論文、博士論文は多い。大学の研究は遅れている。」との内容でした。

敷地6坪の住宅設計

 敷地6坪の住宅設計を依頼され、2023年春竣工しました。極限の極小住宅です。コンクリート造4階建て、茶室を4層積上げたような形式です。某役所の開発事業で残った土地6坪に住宅を建てたいと言う意向。クライアントは単身のご婦人。某役所の開発事業で役所に売却し、残った土地が6坪です。補償金で広いマンションに移転することも選択肢であったと思いますが、生まれ育った思い出の地と言うことですみ続けたいとの意向でした。

 役所の方のご紹介で、「悪質な建設会社やハウスメーカーに引っかかると、追加工事等の名目等(よくある話ですが)で受け取った補償金が奪われる恐れがあるので原田さんに設計、監理をお願いしたい。」と紹介されました。半年以上の間、クライアントと会話を重ね、ご希望、ご意見をうかがいながら平面計画案とその模型(素人の方には模型で見ていただくのがベストです)を10案以上作成し、設備機器、壁紙などもすべてご自身に選んでいただきました。希望とおりの住宅ができたとご満足いただけたと思います。建築家冥利に尽きる仕事をさせていただきました。

世田谷区新庁舎建設、半年遅れ 監査は機能しなかった

5月31日の新聞報道で、世田谷区役所の新庁舎の建設工事、第一期工事の竣工予定が9月までだったのが半年延期になるとのことです。以前本欄でも書きましたが、町田市の図書館が工期3か月遅れで施工した東急建設は1年間の指名停止処分を受けました。単純に二倍の2年間の指名停止処分に値すると思います。それと気になるのが、監査委員の監査体制です。工事が適切に進んでいるか、お金がが適切に使われているかチェックするのが監査事務局の仕事です。監査委員も同様に責任があるということです。

AIA(アメリカ建築家協会)25年会長、アジア系女性

Architecture Dailyという専門誌によりますと、25年度のAIA(アメリカ建築家協会)の会長予定者はEvelyn Leeというアジア系女性です。昨年度、今年度、次年度はすべて女性です。今週の発表ですが、25年度も女性、しかも、アジア系と言う少数派の方。多様性を実現していると思います。

日本建築学会、日本建築家協会に目を転じると男性ばかり。日本人の暗黙の意識と言ったらよいのか、そういう会長には有名な大学教授とか有名な建築家が就任します。その方が「座りがよい」と言うことでしょう。諸外国の事情に対し、どうも、閉鎖的な印象を受けます。

アメリカの組織のトップを見ると、実務的な実績が評価されています。特に、大学教授とか、有名建築家と言うことでありません。しかも、アメリカの大学教授の場合は、教育研究専念義務がありますから、外でのアルバイト、活動はほとんど困難です。

日本の専門家団体で女性のリーダーが生まれるのはいつになるか?今後、国際間競争で生き残るためには女性の活躍が不可欠です。