カテゴリー別アーカイブ: 建築設計

アメリカ建築家協会24年度会長選挙に2人の女性候補

アメリカ建築家協会誌4月号によりますと、2023年度の第一副会長(即ち24年度の会長)の選挙が6月に実施予定で、2人の女性が立候補しました。一人はキンベリー・ニコル・ダウデル(Kimberly Nicole Dowdell)女史、もう一人はエヴリン・リー(Evelyn Lee)女史です。ダウデルは黒人女性で、大手設計事務所HOKの役員、リーはアジア系の女性、若手建築家で、設計事務所のオーナーです。お二人ともいわゆるマイノリティの方。2年前のアメリカ建築家協会会長は女性でした。お二人の今後の活躍に大いに期待します。

翻って、日本の類似団体の日本建築家協会、日本建築学会ではまだ女性会長、女性最高幹部はいません。建築の分野は他の技術系、理系の学会などと比べ女性比率は高いと思いますが、未だに明治時代の価値観の男性役員が牛耳っているのでしょう。

ウクライナ第2の都市ハリキウ市の復興計画。イギリス人建築家ノーマン・フォスターに託される

イギリスの代表的建築家ノーマン・フォスター事務所が4月18日公表、建築専門誌DZが4月21日、同じく建築専門誌ADが4月22日に発表した記事によりますと、ウクライナ第2の都市ハリキウ市の市長イホル・テレホフとイギリス人建築家ノーマン・フォスターはジュネーブで面会し、市長は、ロシア軍が破壊した街の復興計画の策定をフォスターに依頼し、フォスターは建築家としての英知を集め復興計画を策定すると応えました。ハリキウ市はウクライナの北東部、ロシア国境から40㎞に位置しています。フォスターはロシアでも建築設計をしていますが、ロシア軍のウクライナ侵攻に伴い活動が停止しているようです。侵攻が早く収束し、ハリキウ市の歴史遺産を活用しながら新たな都市が復活、再生することを祈っています。侵攻、侵略が未だ進んでいる段階で、市長が世界的に活動しているイギリス人建築家にマスタープランを託したことは驚きと感銘です。

ニューヨークのハイラインなど提言した市民活動家の死亡記事

ニューヨークタイムズ22年1月14日の著名人の死亡記事の紹介です。ニューヨーク市の都市開発、建築は常に世界の注目を浴びています。最近ですと、マンハッタン南部(下町ウェストサイド)ハイライン(公園)が有名です。ニューヨーク市民のみならず世界から多くの観光客が訪れます。小池都知事も、銀座の高速道路を閉鎖し、ニューヨークのハイラインのような空中公園にしたいと発言しています。

エドワード・カークランド氏が96歳で亡くなりました。氏はハイライン(鉄道高架跡の空中公園)、ハドソン川(マンハッタンの西側の川)沿いの公園、チェルシー地区(マンハッタンの南部下町)の歴史的建造物保存運動など南部マンハッタン地区のアーバンデザインの重要なカギを担いました。市民運動を通して、世界に誇るニューヨーク市のアーバンデザインを具体化しました。

原田のコメント、行政、政治の仕組みとして、アメリカには、市民の声を受け止める制度、度量があることが素晴らしいです。日本の政治、行政の中でなかなかありません。また、市民運動家と言うと、ややもすると、反体制、反行政的な方がいますが、具体的な政策提言をし、実現させる能力、住民組織を引っ張る力は尊敬に値します。日本でもこうした市民運動家の出現を期待したいです。

ニューヨーク市の都市デザインを牽引した都市計画家エリオット氏の訃報

ニューヨークタイムズ12月27日の記事によると、1960年代、70年代のニューヨーク市のアーバンデザインを牽引した革新的都市計画家ドナルド・エリオット氏が89歳で亡くなったとのことです。

私自身69年から70年、74年から76年と2度アメリカに留学し、ニューヨーク市のアーバンデザインが注目されていることを知りました。

エリオット氏のチームの若手アーバンデザイナーのジョナサン・バーネット執筆の「都市政策としてのアーバンデザイン」は当時必読書でした。今では当たり前の「容積移転」の革新的政策を打ち立てました。エリオットは34歳でニューヨーク市の都市計画委員長に就任、若手建築家をチームに招き、それ以前のロバート・モーゼスの強引な再開発のやり方を根本的に変えました。五番街の劇場地区、イーストリバーに面したサウス・ストリート・シーポートの歴史地区の保存を兼ねた再開発を具体化しました。

今や、世界中が注目するアーバンデザインです。また、今では当たり前の市民参加による街づくりで、市内を62のコミュニティに分け、近隣住区単位で都市計画を策定する方法を導入しました。

エリオット氏が策定した都市計画の制度は四半世紀遅れで当時の建設省が採用しました。日本の都市計画制度にも大きな影響を与えました。

原田のコメント:34歳でニューヨーク市の都市計画委員長に就任した人事に驚きとあっぱれ。フィンランドの首相は34歳の女性。若く、エネルギー溢れた、政策立案能力ある方がリーダーに就任すべきです。長老支配、年功序列社会を変えるべきです。また、新しい発想のアーバンデザイン、時代、社会の展開を誘導する政策、社会の動きの後追いでない、誘導政策を策定し、推進すべきです。エリオット氏のチームには、若手建築家が参加しました。経験豊富な長老も大切ですが、若い方のエネルギーを活用すべきです。私はアメリカ、スウェーデンで学びましたが、こうした体験を紹介すると必ず「外国かぶれ」と嫌味を言う方が少なからずします。現在の都市計画制度の一部はニューヨーク市の物まね、多くの制度で海外を参考にしたものがあります。「外国かぶれ」と言う前に少しでも視野を広げ様々なことを学ぶべきです。

アメリカ、ペンシルバニア大。女性の社会参画、多様性、平等性、総合性の実践事例。

アメリカの名門大学の一つ、ペンシルベニア大学建築大学院都市計画学科長Lisa Servon女史の実践事例が紹介されました。今や女性の社会参画、DEI(Diversity, Equality, Inclusive、多様性、平等、総合性)が必須です。アメリカにAIA(Architecture Institute of America:アメリカ建築学会(あるいは建築家協会)という建築家の専門家団体があります。毎月月刊誌を発行しています。7月号に掲載された記事の概要紹介です。

原田のコメント:AIAは頻繁に、女性の社会参画、多様性、平等、総合性について記事を掲載しています。それに比べ、日本の建築学会、建築士会、建築家協会はあまりこうした問題についての記事の掲載は少ないです。建築学会などの指導者層の意識の問題と言えるでしょう。寄稿者はLisa Servon教授、ペンシルベニア大学建築大学院、都市計画学科長で、白人女性です。以下、その概要です。

・指導者層にいる白人女性の立場から、短期的、長期的に、建築分野での多様性について論じる。①数年前、ペンシルベニア大学就職のための面接に来た時、教授陣は多くは白人男性だった。②学生も多くは白人男性。アイヴィーリーグの大学には総合性の伝統が欠けていた。③都市計画学科長として、授業に貧困、社会正義、コミュニティ開発を重点とした。④多様性ある専門家集団とし、、また、教室も多様性を重要視した。この考えは教授会で支持された。④具体的に、教授や学生の募集の際、カリキュラム作成の際、白人以外の教授、学生を増やすことに心がけた。教授陣に、黒人、中国人、ラテン系を採用した。また、白人以外の学生の入学に配慮した。貧困層の学生を受け入れるため3億円の基金を作り、貧困層の学生に奨学金を支給した。⑤大学院長は各学科長にDEI(多様性、平等、総合性)を指示した。⑥教授たちは、DEIを学習することとした。

原田のコメント:ペンシルベニア大学建築大学院都市計画学科のDEIの取組みは素晴らしいです。日本の大学で、教授達がDEIを学習することはないでしょう。日本の大学、学会は理念先行(建前を言うだけ)で、上記のような具体的な実践活動は聞きません。意識ある方々に頑張っていただきたいです。

パンデミック後の住宅設計

COVID19でリモートワーク、テレワークが進み、今後、住宅の設計方法が変わらずを得ません。アメリカで今後の住宅設計のあり方に関してBuilders(住宅建設を対象とした専門誌)にMark Woodsonが寄稿しています。原田のコメントを含め、記事の一部を紹介します。記事は7月1日の配信です。

まず、日米の住宅平均規模の違いについて知っておく必要があります。アメリカの住宅の平均規模はおよそ240㎡、日本は120㎡(正確な数値は住宅統計調査などを参照してください)。アメリカの住宅規模は日本の2倍です。次に、水回りの違いについて知っておく必要があります。日本は平均的にトイレ、浴室は1つです。アメリカでは夫婦の寝室に夫婦専用のトイレ、浴室があり、そして、子供用のトイレ、浴室がもう一つ別にあり、合計2か所あります。場合により来客用にさらに一つトイレがあることもあります。これは感染症対策に重要な要素です。罹患し自宅療養となった場合、感染防止対策として独立、分離したトイレ、浴室があることは有効です。

Woodson氏は今後の住宅設計の重要なキーワードとして、1フレキシビリティ(弾力性、融通性、状況に応じて部屋の用途を変えたり、間仕切りを変えたりなど)、2清掃容易な材料(感染予防対策のため)、3内部と外部の関係(バルコニー設置、大きな開口部から外部の自然を取り入れる)、4雰囲気をよくする色彩計画(快適な心理状態を維持するため)の以上の4要素です。今後の住宅設計(他の分野の設計も同様ですが)でこうした要素に留意しながら設計をする必要があります。

アメリカ建築家協会女性会長

アメリカ建築家協会(AIA:American Institute of Architects)という建築家の唯一、独占的な組織があります。日本でいうと建築学会と建築士会と合わせたような組織で、建築家の登録団体で、建築家の利益を守り、政策提言(その時代の大統領の政策に常に意見表明しています)をし、アメリカでも権威ある専門家組織です。AIAの会長は一昨年は女性でした。新年度の役員選挙で、筆頭副会長に女性が選ばれました。次年度の会長予定者でもあります。日本の建築学会や建築士会では女性の会長はまだ生まれていません。表向き、女性の社会参画など唱えていますが、実質は男性が支配する組織なのでしょう。早く女性会長、副会長が誕生することを祈っております。

バイデン大統領の住宅政策

5月26日のブルムバーグ通信によると、バイデン大統領の下、住宅都市開発省長官(HUD)マルシア・ファッヂ(黒人女性)女史が住宅政策を公表しました。バイデン政権は3180億ドル(1ドル100円として約32兆円)の雇用政策の一部として住宅政策予算を付けました。

ファッヂ長官は26日、カンサス州カンサス市のジャズで有名な中心地区に立寄り「住宅は生活に不可欠なインフラである。」と政策発表しました。「目標は、多くの雇用を創出し、安全な、アフォーダブル(経済的に負担可能な)住宅を供給すること。」と語りました。ホワイトハウスの考えは、基金の創設や減税対策で200万戸のアフォーダブル住宅を建設することです。この計画のポイントはローンの頭金の支援です。さらに、この計画は中心市街地活性化にも使われます。雇用計画において、5000億円が用途地区指定(ゾーニング計画)見直しにも活用されます。例えば、厳しい一戸建ての用途地区を見直し、共同住宅など多くの住宅が供給できるよう用途地区の変更作業も含まれます。

原田コメント:長官がカンサス市のジャズの中心街で演説するという演出がニクイです。雇用政策とアフォーダブル住宅の供給、都市計画の用途見直し政策が一体となり、融合されています。アメリカの政策は横串です。日本ですと、雇用は雇用、公共住宅は公共住宅、都市計画は都市計画とタコつぼ型、バラバラです。アメリカのように、強いリーダーシップでバラバラな政策を統合する必要があります。

ベルリンの連邦議会事務所棟、環境にやさしい木造建築

5月31日のブルムバーグ通信によると、ドイツ連邦議会事務所棟が、木造で建設中です。CO2削減という今日的、世界的な環境問題に対応するための建築です。工場で、木造でコンテナーのように箱状に460個作り、現場で組立て、7階のオフィスにするという工法です。象徴的なことは、建設現場は東西ベルリンの壁の跡地の敷地です。工事費は90億円。建築家はザウアブルヒ・フットン。木造建築で2500トンのCO2を閉じ込め、さらに、建設に使った木材と同量の植樹をし、15年後には同量の木が確保できます。これはさらに2500トンのCO2を吸収するという考えです。

さすがドイツ、政治の中心が自ら率先垂範、CO2削減に貢献しようとする挑戦です。これからの環境政策のお手本です。

ヘルシンキ市役所ウォーターフロント国際コンペ実施発表。築地市場跡地も国際コンペを実施すべし。

建築の専門誌のGlobal Construction Reviewの5月12日号に「ヘルシンキ市役所が新たな文化拠点のための国際コンペを発表」と記事がありました。その内容はヘルシンキ港の中心部のマスタープランを策定するためです。ヘルシンキ市のウォーターフロントの未利用で価値の高い8万3千㎡の土地を再開発し、新しい文化の拠点施設として建築・デザイン博物館も建設する計画です。博物館の設計コンペは別建てで実施される予定です。

ヘルシンキ市役所は、建設会社、建築家、不動産業者からの応募を期待しています。6月21日締め切りで登録、12月までに提案の提出、その後、公表の段取りです。第2段階として、4案に絞り込み、2022年の秋までに最終的に案を絞り込む予定です。マスタープランに要求される内容は、歩行者優先、カーボンニュートラル、文化的な魅力の創出、質の高い建築デザイン、ひいてはヘルシンキ市役所のアイデンティティになるものです。 

立地条件など類似性が高い土地として思い浮かぶのが東京の築地市場跡地開発です。ウォーターフロントで、未使用で、立地条件の価値の高い土地です。東京都は、いずれ、開発業者の提案を受け事業を展開するように耳にしていますが、東京都の経済規模、能力などからすれば、ヘルシンキ市同様、国際コンペを実施し、世界の英知を求めるべきです。ヘルシンキ市の人口は50万人、フィンランド語は、日本語のように複雑な言語体系です。そうした状況の市役所が国際コンペを実施します。こうした国際コンペは世界の常識ですが。国内だけ(都内だけ)で事業者選定など進めると、世界貿易機関(WTO)から日本(東京)の市場は閉鎖的だと訴えられ、跡地開発の事業者に海外企業を含めなさい、設計コンペをしなさいなど指導されるかもしれません。