カテゴリー別アーカイブ: 建築設計

アメリカ、ペンシルバニア大。女性の社会参画、多様性、平等性、総合性の実践事例。

アメリカの名門大学の一つ、ペンシルベニア大学建築大学院都市計画学科長Lisa Servon女史の実践事例が紹介されました。今や女性の社会参画、DEI(Diversity, Equality, Inclusive、多様性、平等、総合性)が必須です。アメリカにAIA(Architecture Institute of America:アメリカ建築学会(あるいは建築家協会)という建築家の専門家団体があります。毎月月刊誌を発行しています。7月号に掲載された記事の概要紹介です。

原田のコメント:AIAは頻繁に、女性の社会参画、多様性、平等、総合性について記事を掲載しています。それに比べ、日本の建築学会、建築士会、建築家協会はあまりこうした問題についての記事の掲載は少ないです。建築学会などの指導者層の意識の問題と言えるでしょう。寄稿者はLisa Servon教授、ペンシルベニア大学建築大学院、都市計画学科長で、白人女性です。以下、その概要です。

・指導者層にいる白人女性の立場から、短期的、長期的に、建築分野での多様性について論じる。①数年前、ペンシルベニア大学就職のための面接に来た時、教授陣は多くは白人男性だった。②学生も多くは白人男性。アイヴィーリーグの大学には総合性の伝統が欠けていた。③都市計画学科長として、授業に貧困、社会正義、コミュニティ開発を重点とした。④多様性ある専門家集団とし、、また、教室も多様性を重要視した。この考えは教授会で支持された。④具体的に、教授や学生の募集の際、カリキュラム作成の際、白人以外の教授、学生を増やすことに心がけた。教授陣に、黒人、中国人、ラテン系を採用した。また、白人以外の学生の入学に配慮した。貧困層の学生を受け入れるため3億円の基金を作り、貧困層の学生に奨学金を支給した。⑤大学院長は各学科長にDEI(多様性、平等、総合性)を指示した。⑥教授たちは、DEIを学習することとした。

原田のコメント:ペンシルベニア大学建築大学院都市計画学科のDEIの取組みは素晴らしいです。日本の大学で、教授達がDEIを学習することはないでしょう。日本の大学、学会は理念先行(建前を言うだけ)で、上記のような具体的な実践活動は聞きません。意識ある方々に頑張っていただきたいです。

パンデミック後の住宅設計

COVID19でリモートワーク、テレワークが進み、今後、住宅の設計方法が変わらずを得ません。アメリカで今後の住宅設計のあり方に関してBuilders(住宅建設を対象とした専門誌)にMark Woodsonが寄稿しています。原田のコメントを含め、記事の一部を紹介します。記事は7月1日の配信です。

まず、日米の住宅平均規模の違いについて知っておく必要があります。アメリカの住宅の平均規模はおよそ240㎡、日本は120㎡(正確な数値は住宅統計調査などを参照してください)。アメリカの住宅規模は日本の2倍です。次に、水回りの違いについて知っておく必要があります。日本は平均的にトイレ、浴室は1つです。アメリカでは夫婦の寝室に夫婦専用のトイレ、浴室があり、そして、子供用のトイレ、浴室がもう一つ別にあり、合計2か所あります。場合により来客用にさらに一つトイレがあることもあります。これは感染症対策に重要な要素です。罹患し自宅療養となった場合、感染防止対策として独立、分離したトイレ、浴室があることは有効です。

Woodson氏は今後の住宅設計の重要なキーワードとして、1フレキシビリティ(弾力性、融通性、状況に応じて部屋の用途を変えたり、間仕切りを変えたりなど)、2清掃容易な材料(感染予防対策のため)、3内部と外部の関係(バルコニー設置、大きな開口部から外部の自然を取り入れる)、4雰囲気をよくする色彩計画(快適な心理状態を維持するため)の以上の4要素です。今後の住宅設計(他の分野の設計も同様ですが)でこうした要素に留意しながら設計をする必要があります。

アメリカ建築家協会女性会長

アメリカ建築家協会(AIA:American Institute of Architects)という建築家の唯一、独占的な組織があります。日本でいうと建築学会と建築士会と合わせたような組織で、建築家の登録団体で、建築家の利益を守り、政策提言(その時代の大統領の政策に常に意見表明しています)をし、アメリカでも権威ある専門家組織です。AIAの会長は一昨年は女性でした。新年度の役員選挙で、筆頭副会長に女性が選ばれました。次年度の会長予定者でもあります。日本の建築学会や建築士会では女性の会長はまだ生まれていません。表向き、女性の社会参画など唱えていますが、実質は男性が支配する組織なのでしょう。早く女性会長、副会長が誕生することを祈っております。

バイデン大統領の住宅政策

5月26日のブルムバーグ通信によると、バイデン大統領の下、住宅都市開発省長官(HUD)マルシア・ファッヂ(黒人女性)女史が住宅政策を公表しました。バイデン政権は3180億ドル(1ドル100円として約32兆円)の雇用政策の一部として住宅政策予算を付けました。

ファッヂ長官は26日、カンサス州カンサス市のジャズで有名な中心地区に立寄り「住宅は生活に不可欠なインフラである。」と政策発表しました。「目標は、多くの雇用を創出し、安全な、アフォーダブル(経済的に負担可能な)住宅を供給すること。」と語りました。ホワイトハウスの考えは、基金の創設や減税対策で200万戸のアフォーダブル住宅を建設することです。この計画のポイントはローンの頭金の支援です。さらに、この計画は中心市街地活性化にも使われます。雇用計画において、5000億円が用途地区指定(ゾーニング計画)見直しにも活用されます。例えば、厳しい一戸建ての用途地区を見直し、共同住宅など多くの住宅が供給できるよう用途地区の変更作業も含まれます。

原田コメント:長官がカンサス市のジャズの中心街で演説するという演出がニクイです。雇用政策とアフォーダブル住宅の供給、都市計画の用途見直し政策が一体となり、融合されています。アメリカの政策は横串です。日本ですと、雇用は雇用、公共住宅は公共住宅、都市計画は都市計画とタコつぼ型、バラバラです。アメリカのように、強いリーダーシップでバラバラな政策を統合する必要があります。

ベルリンの連邦議会事務所棟、環境にやさしい木造建築

5月31日のブルムバーグ通信によると、ドイツ連邦議会事務所棟が、木造で建設中です。CO2削減という今日的、世界的な環境問題に対応するための建築です。工場で、木造でコンテナーのように箱状に460個作り、現場で組立て、7階のオフィスにするという工法です。象徴的なことは、建設現場は東西ベルリンの壁の跡地の敷地です。工事費は90億円。建築家はザウアブルヒ・フットン。木造建築で2500トンのCO2を閉じ込め、さらに、建設に使った木材と同量の植樹をし、15年後には同量の木が確保できます。これはさらに2500トンのCO2を吸収するという考えです。

さすがドイツ、政治の中心が自ら率先垂範、CO2削減に貢献しようとする挑戦です。これからの環境政策のお手本です。

ヘルシンキ市役所ウォーターフロント国際コンペ実施発表。築地市場跡地も国際コンペを実施すべし。

建築の専門誌のGlobal Construction Reviewの5月12日号に「ヘルシンキ市役所が新たな文化拠点のための国際コンペを発表」と記事がありました。その内容はヘルシンキ港の中心部のマスタープランを策定するためです。ヘルシンキ市のウォーターフロントの未利用で価値の高い8万3千㎡の土地を再開発し、新しい文化の拠点施設として建築・デザイン博物館も建設する計画です。博物館の設計コンペは別建てで実施される予定です。

ヘルシンキ市役所は、建設会社、建築家、不動産業者からの応募を期待しています。6月21日締め切りで登録、12月までに提案の提出、その後、公表の段取りです。第2段階として、4案に絞り込み、2022年の秋までに最終的に案を絞り込む予定です。マスタープランに要求される内容は、歩行者優先、カーボンニュートラル、文化的な魅力の創出、質の高い建築デザイン、ひいてはヘルシンキ市役所のアイデンティティになるものです。 

立地条件など類似性が高い土地として思い浮かぶのが東京の築地市場跡地開発です。ウォーターフロントで、未使用で、立地条件の価値の高い土地です。東京都は、いずれ、開発業者の提案を受け事業を展開するように耳にしていますが、東京都の経済規模、能力などからすれば、ヘルシンキ市同様、国際コンペを実施し、世界の英知を求めるべきです。ヘルシンキ市の人口は50万人、フィンランド語は、日本語のように複雑な言語体系です。そうした状況の市役所が国際コンペを実施します。こうした国際コンペは世界の常識ですが。国内だけ(都内だけ)で事業者選定など進めると、世界貿易機関(WTO)から日本(東京)の市場は閉鎖的だと訴えられ、跡地開発の事業者に海外企業を含めなさい、設計コンペをしなさいなど指導されるかもしれません。

ストックホルム、1930年代の住宅。社会福祉政策の大転換

ブルムバーグ通信3月31日配信の記事の一部紹介です。1930年代スウェーデンの住宅事情はヨーロッパで最悪でした。スウェーデンは貧しい農業国で、多くの国民が祖国を捨て新天地アメリカを目指しました。出生率はヨーロッパで最低でした。適切な質の住宅がなかったことが原因でした。当時の住宅事情は、石と煉瓦で造られた自然光も十分でない安普請の賃貸住宅でした。子供を産もうとする動機がありませんでした。

こうした住宅問題に対し「豊かな子供の家」Barnrikehus(barn:子供、rike:豊、hus:家)という集合住宅が低所得者のため、中心市街地の外縁に建設されました。シンプルな近代建築の意匠です。この住宅建設がスウェーデンの社会民主主義の転換点になりました。

1934年、ノーベル文学賞のアルバ・ミュルダールと夫のグンナーは「人口問題の危機」を出版。著書で「無料の医療、児童福祉の充実、家事は有料」という提言をしました。この提言で家賃補助、手軽な住宅ローンの制定で住宅政策の改善につながりました。自治体は、土地所有者に対し低所得者のためより良い住宅を供給させる政策を展開しました。住戸面積は40㎡、奥行き12メートル以内で、風通しが良い板状集合住宅です。日当たり、風通しが良いので当時流行した結核感染の防止にもなりました。セントラルヒーティング、トイレ、温水設備、洗濯室も設置されました。働く母親のために保育園も併設されました。大変革です。出生率上昇のため、家賃は子供が多くなると低減されました。戦後、スウェーデン政府は低所得者のみならずすべての国民に適切な質の住宅供給をしました。

参考に、2003年と少し古いデータですが(たまたま手元にありました)、家族。子供向け公的支出の対GDP比率と合計特殊出生率で見ると正の相関があります。家族・子供向け公的支出の対GDP比率が3%から4%の国は、出生率は1.6%から2%です。スウェーデンは家族・子供向け公的支出の対GDPは3.5%、出生率1.7。日本は家族・子供向け公的支出の対GDP比0.75%、出生率1.3%です。

最近政府が「子ども庁」設立しようとしています。スウェーデンの100年間の住宅・社会政策は参考になります。しかし、懸念。日本の予算は、従来の既得権の積み重ねでがんじがらめになっています。この際、前例と決別し、子育てしやすい住宅政策含めた子供政策の予算を政治力で確保することを期待します。建築デザインの観点から、社会建築こそ意匠にエネルギーを注入すべきです。上記の「豊かな子供の家」のデザイン思想、ルネッサンス建築の代表作のフィレンツェの孤児院(罪なき子供の家)、欧米各国に見られるデザインの優れた公共住宅を参考にすべきです。

アメリカ、カンサス市の建築ルネッサンス

Architecture Dailyという建築専門誌の4月号によると、アメリカでは中西部のカンサス市が建築デザインで新たな拠点となりました。従来、ニューヨーク市やロサンジェルス市が世界の建築デザインの拠点ですが、カンサス市は今やアメリカの建築デザインのリーダーになりました。代表的具体事例です。競技場Sprint Center、エルドラド造醸所、カンサス市美術館、カウフマン舞台技術センター、カンサス大学管理棟、ガラスの迷路、ネルソン・アトキンス美術館、セントテレサ女子大学教会、公園に貨車を設置し文化芸術活動の舞台に転換(カンサス市の文化の1%事業)などです。アメリカの多くの都市を訪問しましたが、次はカンサス市を訪問したいです。

中国深圳市オペラハウス国際コンペ。フランス人建築家ジャン・ヌーヴェル入賞。

中国深圳市が実施したオペラハウス国際コンペで、フランス人建築家ジャン・ヌーヴェルが入選しました。ヌーヴェルは東京都港区にある電通本社の設計で日本でも知られた建築家です。デザインのコンセプトは、音楽が海と出会う場所で、従来よくある閉じられた空間としてのオペラハウスでありません。新たな時代の新しい造形です。延床面積は22万2千㎡。市役所は開かれた国際コンペを実施しました。14か国から100作品以上の応募がありました。

[原田コメント]体制が異なる中国、深圳市役所が素晴らしい公共建築を創り出そうと努力していることに敬意を表します。一方、デザインや技術の質を問わず、安易に入札(価格競争のみ)で作家を決めている日本政府、自治体は中国の深圳市役所を見習うべきです。

ニューヨーク市役所住宅局で低所得者用住宅設計コンペ実施

建築の専門誌によると、12月30日、ニューヨーク市役所住宅局(正式にはDepartment of Housing Preservation and Development)がアフォーダブル住宅(低所得者用の住宅)(約1万㎡)の設計コンペを発表しました。特に、驚きは、少数派や女性が経営する企業が積極的に参加してほしいと呼びかけていることです。1か月ほどまで、ロサンジェルス市でも低層住宅の設計競技を実施するとの報道記事を紹介しました。

欧米では、設計者の選定に設計競技が多く実施されています。日本の公共事業でも、デザインは能力、経験、センス、適性があり、安易だからと入札でなく、設計競技、あるいは、プロポーザルで設計者、事業者を選定すべきです。結果、良いものが残ります。

「自由」な西欧諸国での設計競技は多いですが、なんと、共産党国家でも設計競技で外国人建築家が選定されています。ロシアのノヴゴロドのドストエフスキー劇場の保全修復の建築家選定で、設計競技が実施されました。中国、上海で重要な広場の設計競技が実施されました。日本でもどんどん設計競技、できれば国際競技を実施すべきです。