柔道連盟のガバナンス、公金不適切処理事件、指導上の問題が指摘されました。
港区長の体験、いくつかの組織の責任者を務めた経験からの戒め含めてのコメントです。
第1点、トップのあり方です。全ての組織において、トップは倫理観、経営力、専門知識等要求されます。
NHKのトップアナウンサーでもNHKの会長になりません。プロ野球の最優秀選手でも球団社長になりません。専門能力と経営は別物です。
柔道の金メダリストであることと、組織経営は別物です。
理事会、評議員会、監査役等、組織が適切に機能しなかった、という組織を作ったという点で、前理事長は問題アリです。区長時代、自らの戒めのためと適切な区政運営のため、監査機能を強化しました。
2点目、公金不適切処理事件です。お金は1円たりとも正確に処理しなければなりません。理事長以下、関係役員が個人の責任において返還しなければなりません。港区で金銭の不祥事が生じた場合、トップ自ら弁済しました。トップはそういう責任の取り方と度量が必要です。前理事長は体格は立派ですか、心は虚弱と感じました。金銭の不適切処理について明確に謝罪しなければなりません。個人の財産をもって返還すべきです。
3点目、指導上の問題です。特に女子チームで、監督が「ブス」「デブ」等侮辱的な言動と暴力を使ったとのことです。「ブス」「デブ」はおよそ柔道の指導と関係ありません。人権意識が強い欧米であれば、そうした言動は裁判で損害賠償の対象になると思います。指導者は即解雇されるでしょう。侮辱的な言動や暴力を使わなければ指導できない指導者は自らの能力がないことを示したことになります。
柔道連盟の不祥事を取り上げましたが、多くの組織で、ガバナンス、金銭問題、指導上の問題が報道されています。
特にトップは自覚する必要があります。自覚できる人物のみがトップに就任すべきです。オリンパスの社長、経営陣もひどい事例です。オリンパスの広報に照会しましたが、一切回答ありません。
月別アーカイブ: 2013年8月
教えること、学ぶこと
昭和31年ピアノの発表会のプログラムが見つかりました。小学校2年の時です。私がバイエル69番を演奏と書かれています。貧しい家庭でしたが、母親が音楽の教養を身につけろという方針でした。
その後、お茶、生花、柔道、(こうした知識は留学時、友達作りに役立ちました)、剣道、モータースポーツ(大型2輪)、マリンスポーツ(小型船舶免許)、留学のための英会話等学びました。現在も学びを続けています。幸いすばらしい指導者と出会い、能力もセンスもない私をうまく指導していただきました。
専門の建築、都市計画、インテリアは、すばらしい世界的な指導者の下、ハードなトレーニングを受けました。
自ら学ぶ側でいると、浅学菲才でも、自分が年の功で教える側に立つ時に、どのように指導したら、学び手にとりより学びやすいか、ある程度分ります。
時々指導者の不祥事のニュースに接します。暴力、暴言、時には死、指導対象者の異性を愛人にするなどの内容です。指導者として不適切です。そうした方は、真面目に学んだことがない方か、真剣に教育を受ける機会がなかった不幸な方がたまたま指導者になってしまったとも思います。
指導者の責任は重大です。常に、学ぶ側にも軸足をおいておくと、自分の教え方が内省できると思います。
ライス大学と世界の評価
ライス大学はヒューストン(全米第4位の大都市)にある、学生数4000人程度の総合大学です。
数日前、同窓会ニュースレター夏季号が届きました。
オランダのライデン大学が世界中の500大学を調査し、自然科学と技術分野の論文の質とその与えた影響を評価をしたところライス大学が世界で1位であるという評価とのことです。
自然科学全体では世界の6位です。同窓生としてはうれしい話題です。
ちなみに1位はマサチュセッツ工科大学、2位カリフォルニア大学サンタバーバラ校、3位スタンフォード、4位プリンストン、5位ハーヴァードです。小規模大学としてはトップです。
日本のマスコミの報道の仕方はステレオタイプが多いです。ニューヨーク発、ワシントン発といった限られた視点が多いです。ヒューストンからの情報はほとんどありません。もっとも最近はテキサスレンジャーズのダルビッシュの活躍でテキサスの名前がよく出ますが。
様々な視点からの情報が必要です。
ちなみに、ライス大学は4000人の総合大学で、理工系が中核ですが、音楽部があります。名誉ある賞を受賞したライス大学出身の音楽家がいます。ビジネススクールもあります。公共政策大学院もあります。
世界に先駆け宇宙工学科も設立しました。最近はNASAの宇宙飛行士は日本人含め外国人が増えましたが、当初はNASAの宇宙飛行士の半数はライス大学の出身者と聞きました。
なお、音楽や芸術の知識は、欧米では、社会の指導者として必須の教養です。
甲子園野球とアメリカ大統領選挙
8月22日甲子園で前橋育英高校が優勝しました。延岡学園が準優勝です。一人一人の選手の健闘ぶりに敬意です。
私は甲子園野球というと、アメリカの大統領選挙はじめアメリカの幹部人事を思い起こします。
日本では首相の選考はじめ組織のトップ人事は経験ある派閥のトップが就任するパターンです。
アメリカの大統領選挙は、民主党、共和党でそれぞれ我こそはという新人が手を挙げ、デイベイト合戦を繰り返し、勝ち抜き、それぞれの候補となり、2党の候補の決勝戦で勝負が決まります。すべてのディベイトが公開され、国民に分かりやすくトップが決まります。
オバマ、クリントン、ケネディなど若手が次から次へと登場します。
私の留学時代の指導教授ピーター・ロウ氏がハーヴァード大学建築大学院院長に就任したのも40代です。
政治家も社長も大学の学長もありとあらゆるトップの選考はこのようにすべきです。
大阪市立高校体罰問題
平成25年1月大阪市立高校で、運動部のキャプテンが監督の体罰が原因で自殺しました。鍛錬と管理の観点からコメントします。
まず鍛錬についてです。体罰は厳禁です。指導は客観的なデータを基になされるべきです。どのような目標を立て、鍛錬するか、明確なヴィジョンを作り、生徒に示し、納得させ、参加させるべきです。
生徒が、わけわからずぶんなぐられたら、わけわからず、スポーツ人生が終わるだけです。
私は、学生時代、海外留学したく、英語を必死に勉強しました。1964年東京オリンピックの前レスリングチームが八田監督の下、畳の上で寝ないで頑張ったと聞き、英会話の授業の前の日は、布団に寝ないで、板の間の上で寝て、痛さで目が覚め、また予習をするというスパルタ英語教育を自らに課しました。特に冬は暖房もつけず、板の間の痛さと寒さで早朝目が覚め、予習を必死でやりました。
極論すれば、自らに厳しさを課さず、生徒に厳しさを課し、気に入らなければぶんなぐるという姿勢は指導者失格です。
教育界全体の課題として、指導者育成教室を設置し、指導者は指導方法論を学ぶ必要があります。
次に、管理責任についてです。橋下市長は市立高校の諸問題の最高責任者です。どこかのタイミングで、市立施設という自らの管理下での事件について、亡くなった生徒、遺族、高校関係者、市民に詫びる必要があります。「バカ役人が」と他人の責任転嫁すべきでありません。石原前東京都知事にも同じ傾向がありました。問題が生じると局長を叱り、終結させるパターンです。
さらに、当時の校長や副校長の責任も同じです。問題があればそれを指摘するのが管理職です。
市長、校長は管理責任を自ら明確にし、謝罪すべきです。校長は退職金を遺族に弔慰金として寄贈するぐらいの償いをしないといけません。
区長時代、区役所内で生じた問題に対し、全てについて議会、区民の前で誠心誠意謝罪しました。
それが管理者の取るべき態度です。
フランスの設計競技で建築家の3つの役割
2002年フランス外務大臣から依頼され、港区南麻布にあるフランス大使館建替えの建築家選定の設計競技の審査員を務めました。想像ですが、フランスの建築界の大御所から私を審査員にと外務省に推薦があったと思います。考えられる理由は3つで、私が立地する港区の区長であること、私は大使館の隣に住む隣人であること、建築家であることだと思います。
審査日程がたまたま春の連休でしたので、審査のためパリまで行きました。そこで、外務次官を委員長とする審査会の真剣な議論とフランスの建築家の果たす異なる3つの役割を知りました。
1番目は、設計競技の課題を作ることに協力する建築家集団の存在です。様々な技術基準の検討です。
2番目は、当然、設計競技に参加する建築家集団です。この件では5組の建築家が参加しました。
3番目は、審査にあたり、審査員が審査をスムースに進行するために、また、議論の的を絞るために、提案内容について、前裁きをする建築家集団の存在です。
建築家がこのような方法で設計競技に参加し、より良い建築を創り出すという方法を日本でも採用すべきと思いました。個性の強い建築家ですが、職務のために一致団結してそれぞれの役割を果たしたと思います。
朝から夕方まで真剣に審査に参加し、大変疲れましたが、良い疲れ方でした。わずかな休憩時間のコーヒーと文字通りの軽いランチでした。
後日談。建築家が決まり、やれやれと思っておりましたら、政権交代で外務大臣が交代。案は差し戻し、ゼロからの再出発となりました。その後、フランスの財政状況悪化で、民活で建替えることになりました。日本の建設会社、商社、不動産会社の共同チームによる建築となりました。日本人のデザインです。
ちなみに、当初のフランス大使館はフランス建築界の大御所ベルモン氏の設計、その協力者は私の先生の菊竹清訓氏です。お二人とも30歳頃の仕事です。若い時から凄い能力を発揮していたと驚嘆です。
ストックホルム地下鉄24時間運行
1971年ストックホルムに留学中の体験です。ストックホルムは人口800万人の首都で人口80万人でした。ストックホルム中央駅から地下鉄で10分の所の駅前のアパートで留学生活をしておりました。地下鉄の時刻表を見て驚きました。なんと24時間運転です。もちろん、真夜中の地下鉄の頻度はわずかですが。
今東京都知事猪瀬さんが地下鉄や都バスの深夜運転の可能性について発言しています。好むと好まざるとにかかわらず、東京は24時間都市です。公共交通機関の深夜の時間帯の運行のニーズは高まるでしょう。
42年前80万都市で24時間運行を体験した者として、東京都の様々な検討を期待しております。
(ただし、最近のストックホルムの交通事情は知りません)
日米TPP交渉
TPP交渉(環太平洋経済連携協定)に日本が参加、全体協議と並行し、日米協議が始まりました。
私は1998年外務省サービス貿易室が設置したサービス貿易研究会の委員を、日本建築士会連合会代表で務めました。弁護士、会計士、医師、建築士等のサービス業の自由化の議論でした。会計は世界共通ということで早々前進。建築デザインも欧米の建築家が日本で設計活動をし、また、日本人建築家が海外で設計活動しており、実質自由化。医師、弁護士の分野は自由化のハードルが高いと感じました。
医師の分野ではロシア大統領エリツィンの心臓手術に、ヒューストンのテキサス・メディカルセンターのディベイキがモスクワへ行き、執刀しました。ロシアの医師免許を持っていませんから無免許手術となります。しかしアメリカの医師免許を持ち、世界最高の心臓外科医ということで手術を依頼されました。そうした自由化は進むと思います。ちなみにディベイキ医師は私がヒューストンのライス大学に留学しているときから有名人でした。ポルシェを乗っていました。
サービス貿易の議論に参加した経験からのコメントです。
気になる点は、アメリカの首席交渉官のフロマン氏と日本の外務官僚である首席交渉官の経歴、立場の違いです。
氏はイスラエルからアメリカに留学、苦学し、今のポストに就いた苦労人です。また、アメリカの首席交渉官は議会承認人事です。
日本の首席交渉官は外務省官僚です。大変優秀で経験豊富な方と思います。しかし、任命は外務大臣の通常の人事で、国会で承認を得たわけではありません。
フロマン氏が雑草のような経歴で、かつ、議会承認を得、就任している重みを考えると、相当手こずるのではと思います。
日本の国益と世界の協調というバランスの中で、良い結果が出ることを期待します。
百貨店を市庁舎にコンバージョン
関東地方の某市の依頼で、技術監査に行きました。
市街地で廃業になった百貨店を市庁舎にコンバージョンするという事業です。
全国的に珍しい事例と思います。完成すると注目されると思います。
資源の活用という観点(CO2の低減になります)、市街地のにぎわい復活という観点等からも有意義と思います。
港区長時代、廃校になった小学校を特別養護老人ホームにコンバージョンしました。
もし、解体し、新築すると、膨大なごみが出て、かつ、新築でCO2を出したはずです。
環境の時代、コンバージョンにもっと注目する必要があります。
コンバージョンに関しての拙稿もご笑覧下さい。
川越東照宮見学、日本建築研究会
平成25年8月3日、日本建築研究会の見学会に参加しました。
川越周辺の伝統建築の見学です。
見学先で特筆すべき内容は仙波東照宮です。
日本3大東照宮の一つです。日光、久能山と川越の仙波東照宮です。
3大の意味は「東照宮」の文字は当時の後水天皇の直筆であることです。
仙波東照宮は普段は公開されていませんが、日本建築研究会(顧問は東大藤井教授、相談役は伊藤延男先生)という専門家集団ということで特別のお計らいで内部を見学させていただきました。
他の2つの東照宮と同様、すばらしい色彩で施された意匠です。
拝殿の背後の扉を開けると日の光が差し込み、その奥に本殿があるという配置による演出です。
拝殿に、36歌仙絵額、岩佐又兵衛筆の国宝、岩槻藩主が奉納した鷹絵額12面、狩野探幽作が飾られています。(飾られているのはレプリカ、本物は別のところで保管)。
川越は蔵の街、喜多院等で知られていますが、東照宮(現在は境内の外からしか見れませんが)も是非見学されることお勧めします。
地図作成技術が不十分な時代、久能山から富士山の軸線上の延長上の日光に東照宮を置き、徳川家康公の遺骸を祀り、関東の北の守りとしました。家康公の遺言です。久能山東照宮は2年前同会で見学しました。
家康公の都市計画の知識に敬服です。また、素材を大切にする日本建築の特徴と異なるバロック的な装飾を創り出した発想力にも頭が下がります。
港区の芝公園にも東照宮があります。さらに民間でも東照宮が100以上建立されたようです。
私の母方の親類宅にも民間信仰の東照宮があり、徳川家康公を祀っています。宮の建て替えの際、秘仏を見ることができました。東照宮建築の研究をしたくなりました。
また、川越の都市計画形成史を勉強したくなりました。いつ、だれが、どういう道路計画を決定、あるいは、施設配置、建築線を決めたか等です。若い方に研究をしていただけるとよいと思います。