日別アーカイブ: 2015年8月7日

港区長秘話その21、報告書をチェック、積算書をチェック

就任間もない頃、某課長が完成した報告書(案)を持参しました。私は、早速読み、問題点を指摘し、修正させました。幹部職員も区議も、新米区長のお手並み拝見といったところでした。報告書案に区長自ら修正を入れたことはすぐあちこちに伝わったようです。多くの幹部は緊張したと思います。それからは課長が自らチェックし、区長室に届けるようになったと思います。

最近の港区の報告書をいくつか読みましたが、客観的なミスが多くあります。分析で考え方の違いは許容範囲ですが。幹部たちは、チェックするような視点でしっかり報告書を読んでいないのでしょう。

同様、就任間際に、工事発注の間際の案件がありました。前任区長が手掛けた公共事業です。田町スポーツセンターのプール棟です。気になり、積算書を区長室に持ってこさせ、区長自らチェックし、2000万円程度減額指示しました。大手の設計事務所の業務です。いろいろミスを見つけ指摘しました。これも、侮れない区長と職員にショック療法となったことと思います。契約課長T氏が「区長がこのようなことをしてよいのですか」と言ってきたのは驚きました。本来「区長がチェックしてくれたおかげで税金を節約でき、ありがとうございました。このようなお仕事を区長にさせてしまい申し訳ありません。今後は気を付けます」が正解の発言です。

いずれ書きますが、もっと問題のある積算書のチェックが半年後にありました。30億円の積算書を私がチェック、3億円減額させました。この詳細は後日述べます。当時の施設課職員の業者任せで自らチェックしないという意識は問題でした。また、もっと問題なことは、こうしたより正確、かつ、公正な積算書という私の作業について、公共事業の契約に関心を持つベテラン区議Y氏(官製談合の元締め)に話が伝わっていたことです。「原田は区長室で積算書のチェックをしている」と。施設課職員が某区議とツーツーであることに驚きました。こうしたこと外部の人間に話すべきではありません。一方こんなものかとも感じました。なお、積算書のチェックは自宅で深夜にやりました。

ロサンジェルス市役所視察、原田敬美と名古屋市議の違い

1988年7月。ロサンジェルス市のウォーターフロント開発について、事前に市役所の幹部にインタビューを航空便の手紙で申込みました。月曜日から金曜日、午前、午後と多くの関係部長と面会しました。熱心に取材していると担当者がロス市警が監視用にヘリコプターを飛ばすので同乗してくださいと案内されました。この市役所のサービスぶりは日本の市役所も勉強すべきです。

ロサンジェルス市役所職員の話し、「数日前に姉妹港である名古屋市の市議会議員数名が公務視察にロサンジェルス市に来たが、スライドでプレゼンテーションをしたら多くが居眠り、また、ボソボソと「早くでディズニーランドに行きたい、サンディエゴ動物園に行きたい」と同僚同士で会話を日系人のスタッフが耳にし、不快に感じたたそうです。それに比べると原田さんの視察マナーは真面目そのもの。ご褒美にヘリコプターにご招待と言われました。

だいぶ昔のことですが、税金を使っての議員の海外視察がこの程度で、また、受け入れ側から低い評価を受けるのは情けないことです。今は改善されたことを期待します。

新国立競技場、いくつかの課題

1 設計競技の手続きの問題:フランス政府の設計競技の審査員を務めました。その経験から、手順に問題があります。フランスの大使館建替えで建築家選定の設計競技です。異なる建築家が専門家として段階ごとに参加しました。まず、課題作成の段階(複数)。次に、設計競技に参加する建築家5名。次に、競技案を技術的に審査する建築家数名。それに本審査を担当する建築家。(本件の場合、外務次官を委員長とし、外務省の施設部長、在日フランス大使、フランス人建築家3、4名、それに原田敬美です。)新国立の場合、このような方式になっていません。また、所謂大学教授は関与しません。日本は大学教授の権威を過信しております。フランスでの審査会の様子です。審査員が真剣に意見交換をしました。今回の審査の議事録は公表されるべきです。フランスのように各段階を設定し、段階ごとに多くの建築家が関与すべきでした。日本の建築界も本競技に関し傍観者でした。審査員の人選に問題がありました。

2 案の選定、価格の視点。審査員が高い評価をしても、価格が設定条件をはるかに超えれば条件違反で失格です。本件でこうした明確な規定を設け、予定額(1300億円)の倍以上となる、予定額をはるかに超える案を失格にすべきでした。

3 将来の維持費の問題。都庁舎の建設費は1500億円でした。17年目の大規模修繕で700億円要しました。単純に同じ比率とすると、新国立竣工後17年目に1300億円の大規模修繕費が必要となります。その頃、国にそのような財源はあるのでしょうか?

4 政治的責任:自分の時代は何とか切り抜け、問題を先送りするパターンはよくあることです。将来に課題を先送りする手法は問題です。

5 外国人建築家に率直に意見を言えない役人。もし、1等賞が私なら、おそらく、役人から呼び出され「原田さんのデザインは良いが、コストが予算の倍だから辞退届を出せ」と強引に権威的に言ってくるでしょう。外人には何も言えない役人体質は問題です。東京国際フォーラムでも、横浜の大桟橋の建設で同様の問題がありました。

6 都知事のマナー。舛添えさんはパーフォーマンスの得意な政治家。文科大臣に辞任を迫りました。でも、本来都知事がオリンピックのホストです。東京都が自ら競技場を建設しなければなりません。コストなどの問題から国立競技場を使わせていただくのですから、都知事は文科大臣に「国立競技場を使わせていただきます。予定通り竣工しますようお願いします」と頭を下げるのがマナーです。でなければホストですから自らオリンピック用に都立の競技場を建設すべきです。

7 新宿区役所の都市計画の問題。この点、マスコミなどで問題になっていませんが、敷地周辺は本来都市計画で高さ制限があったはずの場所。国策だからと巨大で高い建物が建つように都市計画を変更したこと自体も問題とすべきでしょう。高さの問題ももっと議論するべきでした。

見直しでより適切な案が登場することを期待します。