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政治家の海外出張、意識・内容を改善すべき

舛添前東京都知事の海外出張の在り方が問題になりました。いくつかの事例を紹介し、本来のあるべき姿について提案します。

1 個人の体験。港区長時代、フランス外務大臣の招へいでパリを2日間訪問しました。春の連休中で公務に支障がありません。フランス大使館建替えに伴う設計者選定の審査員を依頼されました。1日が審査日、1日が自由日です。飛行機代とホテル代はフランス政府負担。その他は自己負担です。せっかくですから可能な限り何でも見ようと自ら計画を作成しました。(1)OECD本部がパリにありますので、「日本の都市政策勧告書」を執筆した日本部長(アメリカ人の地理学者)に面会、報告書執筆の趣旨をヒアリングしました。東京の都市政策はひいては港区の都市政策でもあります。(2)ルーブル美術館の館長との面会。港区内でルーブル関係のイベントが開催されたので、表敬訪問することにしました。(3)自治体国際化協会のパリ所長(自治省からの出向)に面会、パリ市の地方自治についてヒアリングしました。(4)フランス大統領府元建築長(日本の建設大臣に相当)に面会、最近のパリの建築事情についてヒアリングしました。(5)フランスの若手著名建築家ドミニク・ペロー(パリの国立図書館などの設計)事務所を訪問、さらに、計画がある港区営住宅の参考にパリ市の市営住宅2件の視察、将来の計画課題である品川駅の再開発の参考にモンパルナス駅の視察、などしました。すべて一人で段取りしました。港区役所に英文の手紙を書ける人材は周囲にいません。手紙、時間調整などすべて一人でやりました。帰国後自らの費用で100ページの報告書を書きました。宿泊したホテルの部屋の測量など建築家としてのデータ収集もしました。幹部の数名に自家製の報告書を提供しましたが関心を示さない様子でした。残念でした。

2 区長会で北京市を公式訪問しました。東京都と北京市友好30周年の年で、当時の石原知事の親書を持って北京市長に面会しました。私が訪問団の団長を務めました。単なる観光旅行にしてはいけないので、当時開業したての市営地下鉄の視察、平均的な住居の視察を私自ら指示しました。 団体行動なので時間の余裕を相当とりながらの行動でした。報告書を自ら執筆するつもりでしたが、知らぬ間に事務局職員が作成していました。本来は団長、参加した団員が共同で、感想、評価、分析など執筆すべきです。

3 1988年夏ロサンジェルス市役所に取材に訪問した際聞いた話です。「自腹の取材活動」ですから必死です。少しでも見てやろう勉強しようという気持ちです。ロス市役所職員の説明を必死に聞き取りました。日系人の職員が私につぶやきました。「数日前、姉妹都市の名古屋市の市議会議員団が来たが、居眠りし、ロス市の説明を真面目に聞いてくれなかった。議員同士で、早くディズニーランドに行きたい、早くサンディエゴの動物園に行きたいと話し合っていたのを聴き、不快に思いました。原田さんは一所懸命聞いてくれるのでうれしい」。真面目に取材しているので、市警察のヘリに乗ってもらい上空からも視察してください、と大サービスをしてくれました。議員の無駄遣い、観光旅行の実態を知りました。恐らく、報告書は事務局職員に書かせたのでしょう。

4 模範となるヘルシンキ市職員の意識。1998年(原田が港区長に就任する前)、ヘルシンキ市役所の都市計画局長と審議会委員数名が来日し、ご縁あり、私がガイドを務めました。日程を作成する際、せっかくだから箱根に足を延ばし、温泉を体験したらと提案しました。「税金を使い公務で行くのだから遊びの要素は無しにしてほしい」と局長から航空便で回答がありました。立派な心がけ、意識です。東京に滞在中、終日、港区内を私が案内することになりましたが、お昼はせっかくだからきれいな一流ホテルで食事を予定しましたら、「普通のサラリーマンが食べるような店で、普通のサラリーマンが食べるメニューにしてほしい」と航空便で回答がありました。驚きましたが、考えたら、税金を使い取材に日本まで来るのですから、目的に照らし行動するのは当たり前です。日本で政治家や公務員がこうした意識で出張をしているのか、報告書を自ら作成しているのか、改めて考えてみる必要があります。

出張の仕方、報告書の書き方など無料でお教えします。

イスタンブールで国際会議に出席、様々な驚き

5月25日にイスタンブールのイルディス大学で地中海沿岸域の建築技術分野の学会が開催されました。大会委員長はトルコのコジャエリ大学准教授のコムール女史。彼女から招聘があり、論文を発表しました。27か国100名の発表がありました。日本から3人が発表しました。様々な驚きがありました。

1 女性研究者の多さ。半数近くが女性研究者でした。日本の建築系の学会では女性の発表者は少数です。 2 女性技術者の進出。イスタンブール市役所の案内で地下鉄工事現場を視察しました。現場監督曰く、最近は女性技術者が増えているそうです。 3 地下鉄路線網は現状の2倍にする計画です。案内をいただいた駅では公共駐車場も設置されています。横割り組織の計画です。 4 イスタンブール市は観光都市です。歩くとあちらこちらに様々なタイプのホテルがあります。東京と比較になりません。 あちらこちらに外貨交換所があり、深夜まで営業をしています。東京には外貨交換所が少ないし、また、営業時間に制限があります。 5 旧市街地の著名寺院のアヤソフィア(現在は博物館)とブルーモスクの間の広場に「イスタンブール市の観光クレーム受付所」があり、観光客の様々な苦情に対応しています。 6 イスタンブール空港は24時間の空港、内部は巨大ショッピングセンターです。深夜の時間帯もにぎわっています。買い物効果、雇用に大きな成果があります。出口の荷物引き取り場の目の前にも免税ショップがあります。  7 イスタンブールの裏通りは屋外のオープンカフェが多くあり、商業という観点からも街がにぎわっています。 8 観光施設や公共施設では軍人、警察官が機関銃を持って見せる警備をして治安維持に努めています。

東京都、日本政府も観光振興をうたっていますが、実態は、イスタンブールなど世界の観光都市から相当遅れています。官僚も気が付いていると思いますが、意識に表れていません。ましてや具体的な政策の姿が見えません。私に照会されれば喜んで無料でデータを差し上げるのですが。

トランプ氏の地上げ方法

1988年ニューヨーク市に取材に行きました。その際、ニューヨーク市行政研究所の上席研究員マメン氏が案内いただき取材をしました。(その一部を朝日新聞論説記事に寄稿しました)すでにマンハッタンの中心部にトランプタワーがありました。金色の建物で率直な気持ち、建築家としては違和感を抱くデザインでした。トランプ氏はすでに不動産屋として有名人物でした。セントラルパークの南側を歩いている時、マメン氏は「あのビルはトランプが地上げしている」と説明がありました。(日本でも地上げの時代でした。)その方法は「多くの売春婦をそのビルに住まわせ、まともな住民が嫌気をさし転出するとそのビルを安く買いたたき、地上げを進める」というものです。品格に問題ある不動産屋と思いました。テレビや新聞でトランプ氏の政策が報道されています。氏の不動産ビジネスについて今のところ報道されていません。こうした点も氏を評価する上で重要な要素と思います。