日別アーカイブ: 2017年2月3日

機械学会で講演、港区長、アメリカ、スウェーデン留学での気づき

先週技術士の知人から依頼され、機械学会のセミナーで講師を務めました。趣旨は港区長、アメリカ、スウェーデンに留学し、原田さんしか知らない話をしてほしいとのこと。その立場、そこに行って初めて気が付くことがあります。

港区長を体験し。①区長の身分証明証はありません。警察官に職務質問されても身分証明書がありません。②区長選の選挙資金。以前のブログに書いた通りですが、本当はヤミです。原田の選挙で初めて会計帳簿を作ったと責任者から言われました。それまではどんぶり勘定だったようです。有権者への接待、有権者からの接待は厳禁です。しかし、議員もあちらこちら店に立ち寄り、「釣りはいらねー」と言っていると聞きました。私は飲食店で一円までつり銭を受け取り、翌朝、そのことが噂になっていましたことに驚きました。釣りをもらうのは当然と思っていたからです。「前の区長なら釣りはいらねー」とかっこよく店を出っていったとのことです。③議会は決まった原稿通り読む。国会中継でも議長や委員長は原稿棒読みで進行しているのはご承知の通り。議員の一部は、怒鳴ったり、凄んだり。区の幹部に対し「バカヤロー」と暴言を吐いたり。一部議員のレベルの低さに驚き。アメリカでディベイトを体験した立場から、議論の方法をもっと学んでもらわなくていはと感じた議員が若干いました。④当時議員は出勤すると交通費1日6000円が支給されました。無駄をなくせと(それは正論ですが)声高に主張する議員が若干名いました。選挙目当ての発言でしょう。交通費の実費は400円から500円。無駄をなくせと主張するなら、残りを進んで返還すべき。残りで支持者や仲間と赤ちょうちんの飲み代に化けるのでしょう。⑤ガバナンス。アメリカでは(欧米では)大統領になった者が実際の命令を出します。ケネディ、クリントン、オバマ、40代でしたが、スタッフ、軍は大統領の命令に従いました。港区では、日本のガバナンスでよくあるように「影の区長だ」と称する区議など数名いました。困ったことです。「原田さんのお好きなように。私は院政を敷きませんから」と明言し私に区長をやってくれと頼んだ元区長も何かと仕事に干渉しました。日本での地方自治はそうした二重、三重の権力構造で難しいと感じました。

スウェーデン。1971年留学しました。人口800万人。中立国ですが軍人60万人。人口の8%が軍人です。高福祉で医療福祉教育は無料です。しかし税金は高額です。1971年消費税は10%。現在25%。所得税は40%。文化芸術教育分野の給与の高さに驚きました。20代後半の勤労者の月給490ドル。20代後半の俳優は440ドル。音楽家520ドル。美術館学芸員700ドル。日本政府が検討中の資料整理専門職アーキヴィスト700ドル。外国の映画が毎日上映され、日本の映画を毎週見ました。「虎の尾を踏む男達(榎本健一主演)」、「隠し砦の三悪人(三船一郎)」、「地獄門」などです。今の東京を見ても、東南アジアの映画紹介など公的な施設でしていないでしょう。スウェーデンで異文化理解は進んでいます。スウェーデン語の学習は無料。日本からのニュースの量に驚きました。1971年9月17日新聞の一面で「成田闘争で3人の警官殺害される」と大きな記事。ラジオで公明党竹入委員長が刺された、などです。東南アジアの国の第3,4位の規模の政党の党首が切られたとして、日本で報道されるか、疑問です。生活したアパートは敷金、礼金なし。中央駅から地下鉄10分、駅前の高層アパート。周囲は白樺林。アパートと言ってもベッド、布団、机、シャワーなど完備。スーツケース一つで生活がスタートできます。日本でも留学生を増やそうと文科省が叫んでいますが、1971年のスウェーデンの学生向け住宅の水準にはまだほど遠いです。大きな政府です。公務員は全体の奉仕者です。公務員が横柄ならこうした社会システムは成立しません。

アメリカの大学は日本から応募でき、実績、経験、世界共通の英語と数学の教養試験のみです。世界中どこからも簡単に応募できます。大学の教授は月から金まで、8時から5時まで大学に降り、学生の指導をします。そうでなければ即解雇です。教授の経歴は、自校出身者は1割程度。ほとんど他大学出身者です。しがらみを排除、研究の自由を保障するためです。授業は、音楽、美術、スピーチ、ディベイト、ダンスなど、日本の大学にない科目も多くあります。エリート教育です。スウェーデンの授業料は無料ですが、アメリカは名門大学であるほど高額で、現在は年間授業料は400万円から500万円。だから学生も教授に必死にしがみつき学びます。学期ごとに、学生が教授の評価、授業がうまかったかなど、点数付けをします。ですから教授も必至です。大学に司法権(逮捕権、銃器)を持つ大学警察があります。学長の指揮のもと大学内の犯罪を取り締まります。学長は大学内の警察署長でもあります。アメリカでも芸術家の報酬は高額です。1年半前のニューヨークタイムズによるとニューヨークメトロポリタンオペラの歌手の平均年収3000万円、楽団員は2800万円。東京都交響楽団、N饗の年俸はおそらく600万円から700万円でしょう。舛添前東京都知事が東京にもブロードウェイを作りたいと発言がありましたが、コンテンツ、楽団員の報酬の観点から不可能です。日本では音楽家、俳優、建築デザイナーなど食えない代表選手です。欧米では労働組合の力が強いです。安倍総理曰く、同一労働統一賃金です。一方でステワーデスの報酬はコンチネンタル航空の募集広告によれば時給1400円。倒産した日本航空は高卒40歳で年俸1000万円。世界との基準と全く正反対。私は90年代、いずれ日本航空はつぶれると思いましたが、実際破綻しました。アメリカの自治体によく取材に行きました。大歓迎され、資料もたくさんいただきました。日本の自治体では親切さはどうか?アメリカの自治体は完全自治体。消費税、固定資産税、速度制限、建築条例などすべて自治体が(市議会)決めます。連邦政府、州政府の干渉は一切ありません。大都市は空港も市営です。警察も市役所の一部門です。市長の権限は大統領以上です。ニューヨーク市議会の定数は51名。東京都議会は127名。ニューヨーク市議会の年俸は900万円。都議会は手当含め3000万円。アメリカは小さな政府。すべて自己責任。防犯も。大学で「技術政策の研究」もしています。日本では耳にしません。

アメリカのエンジニアの年収は1500万円。日本の技術士の平均年収は600万円から700万円。技術士は自らの報酬確保に政治活動をすべきです。私も技術士ですが、技術士の一部では日当1万円と驚くべき安売りで仕事をする技術士がいるのは残念です。自らの専門業務に誇りを持つべきです。

日本の社会制度はアメリカとスウェーデンの中間的位置づけ。アメリカとスウェーデンの共通は「表現の自由」です。日本では、わいせつ図書、残酷写真など、税関や警察が判断します。アメリカ、スウェーデン(他の国もですが)国民が判断することで、表現の自由が最大限認められています。権力は一切干渉しません。「国民はバカだからお上がわいせつか残虐か判断する、国民はそれに従え」というのが日本の考え方。海外では、何を発言しても、何を発表しても自由ですが、それを判断するのは国民、発表者の責任というのが欧米流の考え。

2時間の講演の抄録です。