日別アーカイブ: 2017年3月13日

フランス大使館改築設計の建築家選定の審査委員を務めて。

港区長時代、フランス大使館改築設計の建築家選定のための審査委員を依頼されました。偶然2002年春の連休中の2日間で、公務に問題がないと判断、パリに行き選考会に審査委員として出席しました。理由はわかりませんが、元フランス大統領府の建築長(日本の建設大臣のような立場、しかし専門職)のベルモン氏がもしかして私を審査委員にと発言があったのかもしれません。私は地元港区長で、建築家でかつ大使館の隣人です。

5人の建築家が設計競技に参加しました。5案の模型、図面を見て審査員は真剣に討論でした。私も精一杯発言しました。JNという建築家の案はデザインとしてはなかなかすぐれものでした。しかし、私の住まいからわずか2メートルの距離です。既存の緑を保全するというアイデアは良いのですが、あまりにも近すぎます。これは、隣人から反対運動が生じると感じました。そこで私は「この案はデザインの質は高いし、土地利用は既存の緑を最大限保全し、そうした観点から素晴らしいが、根本的に隣接地に近すぎ、また、他の案と比べ倍の高さで、隣接の共同住宅の現状高さ(7階)をはるかに超えており(12階)、隣人から反対運動が起きる恐れがあります。逆に私の娘は「クサヤ」という焼くと強烈な臭いの出る魚が大好きで、自宅で焼くとその臭いが、換気扇の位置の関係で大使館を直撃し、職員にご迷惑をおかけします」と発言しました。日本的やんわりの拒否発言でした。審査員が納得しました。JN氏の案は却下。他の案が選ばれました。しかし、フランス政府の厳しい財政事情の理由で建築はストップ。結果、PFI(民活)で敷地の一部に日本の企業がマンションを建設しその売り上げでフランス大使館を建てるというスキームに変更になりました。

日本の設計競技と異なり、別の建築家チームが技術審査を担当し、技術的な課題を事前に整理してくれました。さらには、別の建築家チームが課題作成をしました。ということで、フランスの建築家選定のコンペでは建築家が課題を作成する役割と技術審査をする役割、本審査をする役割、もちろん、案を提出する役割といくつかの独立した役割を担っていることを学びました。日本でこのようなコンペ(設計競技)はありません。このような方式を検討すべきです。

フランス出張で面白いこと2件。一件目、フランス大使からパリに行く飛行機はエールフランスより日本航空うか全日空にしてはいかがかと言われました。全日空にしました。この出張はフランス外務大臣から正式の招へい状をいただいての出張です。U助役とY秘書は面倒臭かったのか、「私用で言ってくれ」との話。議論してもバカバカしいのでY秘書の発言に従いました。同時に、今後このような事態がまた生じるかもしれないので「区長の海外出張の規則を検討してください」と指示しました。区長在任中検討した様子は無し。U助役もY秘書もガバナンスの観点から問題でした。こうした分野についてどのような対応してよいのか理解不能だったのでしょう。国際都市と言いつつ、国際的な理解、教養は全くありません。