2021年1月19日、新聞報道で「浸水想定域 開発規制へ」国土交通省、今国会に法案、とありました。当面、東京、大阪などの大都市周辺を対象とするようです。以前、国土交通省は続発する大規模水害被害を受け、不動産取引の際の重要事項説明に「水害リスク」を義務付ける方針を決めたという報道もありました。よかったという気持ちと今更という気持ちです。
1974年、テキサス州ヒューストン市(全米で第4位の人口規模)にあるライス大学建築大学院に留学した最初の学期で「建築と都市計画の法制度」の授業は必須科目として受講しました。教授や講師が法律用語を多く語るので理解が困難な授業でした。その中の一つで覚えているのが、テキサス州では100年に一度の確率で発生する洪水のハザードマップが作成され、そこには原則建築を許可しないという規則があることを学びました。もしどうしても建築したい場合は、高さ2メートルの高床構造にすること、それから、ある種の罰金を事前に納めるという厳しい規則があります。つまり、危機状態が生じた際は、消防、警察、軍隊が救助に出動しますので、その費用を保険代わりに行政に事前に納めろという考えと思います。そのような規則を作り、ハザードエリアに建築を作らせない都市計画をしていました。
テキサス州の規制に比べると日本の都市計画はいい加減です。危ない場所にどんどん住宅開発を認めてきたのですから。業者からすれば、売れなくなると困るから「危ない」と言わないでくれ、すでに買った方からすると「売りたいときに売れなくなるから黙っていてくれ」と行政に働きかけがあったのでは、あるいは、忖度あったのかもしれません。この数年の災害を見ていると、そのようなことを言っていられない状況です。救助と復旧にかかった費用は膨大です。それだったら最初から建築規制をしておけばよかったと思います。遅きに失したかもしれませんが、水害リスクの説明義務化、規制は良かったと思います。しかし、まだ不十分です。リスクの説明を受けても無視し、どんどん住宅開発が進む恐れがあります。