月別アーカイブ: 2021年1月

浸水想定域開発規制。テキサス州で50年前に規制。日本は4周遅れ。

2021年1月19日、新聞報道で「浸水想定域 開発規制へ」国土交通省、今国会に法案、とありました。当面、東京、大阪などの大都市周辺を対象とするようです。以前、国土交通省は続発する大規模水害被害を受け、不動産取引の際の重要事項説明に「水害リスク」を義務付ける方針を決めたという報道もありました。よかったという気持ちと今更という気持ちです。

1974年、テキサス州ヒューストン市(全米で第4位の人口規模)にあるライス大学建築大学院に留学した最初の学期で「建築と都市計画の法制度」の授業は必須科目として受講しました。教授や講師が法律用語を多く語るので理解が困難な授業でした。その中の一つで覚えているのが、テキサス州では100年に一度の確率で発生する洪水のハザードマップが作成され、そこには原則建築を許可しないという規則があることを学びました。もしどうしても建築したい場合は、高さ2メートルの高床構造にすること、それから、ある種の罰金を事前に納めるという厳しい規則があります。つまり、危機状態が生じた際は、消防、警察、軍隊が救助に出動しますので、その費用を保険代わりに行政に事前に納めろという考えと思います。そのような規則を作り、ハザードエリアに建築を作らせない都市計画をしていました。

テキサス州の規制に比べると日本の都市計画はいい加減です。危ない場所にどんどん住宅開発を認めてきたのですから。業者からすれば、売れなくなると困るから「危ない」と言わないでくれ、すでに買った方からすると「売りたいときに売れなくなるから黙っていてくれ」と行政に働きかけがあったのでは、あるいは、忖度あったのかもしれません。この数年の災害を見ていると、そのようなことを言っていられない状況です。救助と復旧にかかった費用は膨大です。それだったら最初から建築規制をしておけばよかったと思います。遅きに失したかもしれませんが、水害リスクの説明義務化、規制は良かったと思います。しかし、まだ不十分です。リスクの説明を受けても無視し、どんどん住宅開発が進む恐れがあります。

米国連邦議会議事堂侵入事件、残念。50年前自由に見学可。

1月6日首都ワシントンDC(District of Columbia)の連邦議会議事堂に、一部の過激派が暴徒となり議事堂に侵入、5人が亡くなりました。残念です。特にアメリカの民主主義は世界の民主主義の見本とみられていただけに残念です。

1969年、アメリカ、オハイオ州にあるウースター大学に留学する途中、9月中旬、ワシントンDCに立寄りました。ウースター大学の友人ジム・フォード君の自宅にホームステイしました。その間、ワシントンDCの名物建築を案内いただきました。

その中で印象的だったのが、連邦議事堂見学です。当時の日本の国会議事堂は、荒れ狂う全学連のデモの影響を排除する目的で、議事堂周辺へ近寄ることが困難でした。また、議事堂は国会議員の紹介があれば見学できますが、なかなか近寄りがたい存在でした。それに比べ、アメリカの連邦議事堂は、警備員の姿もなく、建物に自由にアプローチできました。驚きでした。連邦議事堂の建物に寄りかかっての記念写真、今でも大切に持っています。ジム君の話ですと、内部も自由にはいれるとのことでした。私は、さすが民主主義の国、だれにも開かれた議事堂で、国民も民主主義のシンボルである議事堂を大切に見守っているのだ、と理解しました。その後、世界中で発生したテロ事件などの影響で、議事堂の警備は厳しくなったと思います。

残念な事件でしたが、一方で、自分たちの力で元に戻す力もアメリカの民主主義は持ち合わせています。

ニューヨーク市役所住宅局で低所得者用住宅設計コンペ実施

建築の専門誌によると、12月30日、ニューヨーク市役所住宅局(正式にはDepartment of Housing Preservation and Development)がアフォーダブル住宅(低所得者用の住宅)(約1万㎡)の設計コンペを発表しました。特に、驚きは、少数派や女性が経営する企業が積極的に参加してほしいと呼びかけていることです。1か月ほどまで、ロサンジェルス市でも低層住宅の設計競技を実施するとの報道記事を紹介しました。

欧米では、設計者の選定に設計競技が多く実施されています。日本の公共事業でも、デザインは能力、経験、センス、適性があり、安易だからと入札でなく、設計競技、あるいは、プロポーザルで設計者、事業者を選定すべきです。結果、良いものが残ります。

「自由」な西欧諸国での設計競技は多いですが、なんと、共産党国家でも設計競技で外国人建築家が選定されています。ロシアのノヴゴロドのドストエフスキー劇場の保全修復の建築家選定で、設計競技が実施されました。中国、上海で重要な広場の設計競技が実施されました。日本でもどんどん設計競技、できれば国際競技を実施すべきです。

コロナ禍、文化芸術への支援、アメリカの凄さ

コロナ禍、多くの方が経済的に困窮しています。日本でも飲食店、個人事業主などへの支援を政策としてしています。不十分という声もあります。個人事業主の持続化給付金では書類を捏造し、詐欺で数十人が逮捕されたという報道もあります。どさくさ紛れの詐欺師、困ったことです。こういう場面で、必ず不正をする輩がいます。

アメリカからの報道です。驚きました。文化芸術に対する支援です。連邦議会での文化芸術に対する支援策の議案提案、ニューヨークの西隣のニュージャージ州のジャージー市で市民提案による増税による収入で文化芸術への支援、ニューヨーク市の文化芸術支援策などです。情報はニューヨークタイムズです。

1アメリカ連邦議会で150億ドル(約1兆5000億円)の文化芸術分野の方々への支援策を検討しています。全米文化芸術個人業主連盟会長(ミネアポリスの音楽クラブ経営者)が連邦議会に対しロビー活動をしました。法案の骨格は上院で、ミネソタ州選出民主党アミー・クロバッチャーとテキサス州選出共和党ジョン・コーニンの2人の議員が提案しました。ポイントは、民主党と共和党の2人異なる政党の議員の共同提案です。日本の国会でもこのようにしてほしいと思います。12月21日の記事

2 ニュージャージ州ジャージ市で文化芸術支援のための増税市民提案:市民提案で固定資産税を増税し、その収入で困っている文化芸術分野の方々を支援しようという内容です。市民の64%が賛同しています。提案の基本を作成した元ジャージ市アート委員会会長は「厳しい時代だからこそ、アートが大切。」という考えの表れと語りました。同様の増税案の事例は、ミシガン州のいくつかの自治体がデトロイト美術館を支援する目的です。セントルイス市では、2018年、セントルイス動物園、セントルイス美術館、セントルイス歴史博物館を支援するため増税が実施されました。11月4日記事

3 ニューヨーク市47億円の支援:ニューヨーク市文化局は市内の1000の文化芸術団体に4710万ドル(約47億円)の支援をすると発表しました。特に、貧困層の多い地区の621のアート教育団体に3億円増額しました。貧困層の多い地区の子供に対してのアート教育は大切です。また、ジャズで有名なアポロ劇場、世界的に有名なメトロポリタンオペラ、ニューヨーク・フィルハーモニーに対しても支援金を贈ることにしました。12月15日

総括:アメリカの文化芸術に対する意識の高さ、市民提案による増税(市民提案による増税は日本では考えられません)、連邦議会で、相対立する民主党と共和党の上院議員が連名で支援策の法案を提案する、政治活動のすばらしさに感動です。日本の国会議員も政策提案を党派を超えやっていただきたいです。今の国会、特に野党の質問は、第2マスコミといってよいような、政策提案でなく、ジャーナリストの質問、追及の類です。であれば、野党はいらないのではと感じております。