日別アーカイブ: 2021年3月20日

建築界のノーベル賞プリツカー賞、今年はフランス人カップルに。

ニューヨークタイムズ21年3月16日によると、今年のプリツカー賞(建築界のノーベル賞と言われる)受賞者はフランス人カップルの建築家アン・ラカトン、ジャン・フィリップ・ヴァサールに決まりました。

デザイン活動の特徴は、新しい建築を創るために従前の建築を破壊しないことです。つまり、長年使われた既存の建築の再活用をデザインすることです。

代表作の一つ、2012年、パリ市内のパレ東京の拡張事業です。1937年世界博の残置物をデザインし、ヨーロッパ最大の非収蔵型美術館に作り変えました。また、1960年代、ボルドー市で建設された共産主義様式全盛時代の公共住宅(外壁面が多く小さな窓の様式)に、外壁を取り払って新たにバルコニーを設置し、各部屋に太陽と空気を取り入れ、再生し、530戸の新たな公共住宅をデザインしました。さらに、1969年建設されたパリ市郊外のトゥール・ボア・ル・プレトゥルは、同様、バルコニーを拡張し、面積を広げ、修復しました。2人によると、技術、規制などは後回しとして、単に、公共住宅に空気と太陽を取り入れただけだそうです。

2010年、「小規模な大変革」というテーマでニューヨークの近代美術館で展示され、デジーンというイギリスの建築雑誌により優れた建築として表彰されました。また、ニューヨークタイムズの建築評論家は、彼らのデザインを建築の創意工夫と建築の若返りと称賛しました。

こうした活動の積み重ねで、今回のプリツカー賞に至りました。優れたデザイン活動、社会活動です。

ニューヨークタイムズが3月16日にプリツカー賞受賞者の報道、Architecture Daily も続けて報道、18日ブルムバーグニュースが報道しました。日本の主要メディアではプリツカー賞受賞の報道はお目にかかれません。(私が目を通している範囲ですが)残念です。欧米のメディアに比較し、日本のメディアは建築文化にあまり関心がないように思います。もう一点、日本では、建築のニュースが取り上げられるのは、大規模な建築や華々しいデザインの建築が多いですが、公共住宅、修復建築といった地味な建築に、建築界のノーベル賞が与えられたことは嬉しいことです。