月別アーカイブ: 2022年1月

ニューヨークのハイラインなど提言した市民活動家の死亡記事

ニューヨークタイムズ22年1月14日の著名人の死亡記事の紹介です。ニューヨーク市の都市開発、建築は常に世界の注目を浴びています。最近ですと、マンハッタン南部(下町ウェストサイド)ハイライン(公園)が有名です。ニューヨーク市民のみならず世界から多くの観光客が訪れます。小池都知事も、銀座の高速道路を閉鎖し、ニューヨークのハイラインのような空中公園にしたいと発言しています。

エドワード・カークランド氏が96歳で亡くなりました。氏はハイライン(鉄道高架跡の空中公園)、ハドソン川(マンハッタンの西側の川)沿いの公園、チェルシー地区(マンハッタンの南部下町)の歴史的建造物保存運動など南部マンハッタン地区のアーバンデザインの重要なカギを担いました。市民運動を通して、世界に誇るニューヨーク市のアーバンデザインを具体化しました。

原田のコメント、行政、政治の仕組みとして、アメリカには、市民の声を受け止める制度、度量があることが素晴らしいです。日本の政治、行政の中でなかなかありません。また、市民運動家と言うと、ややもすると、反体制、反行政的な方がいますが、具体的な政策提言をし、実現させる能力、住民組織を引っ張る力は尊敬に値します。日本でもこうした市民運動家の出現を期待したいです。

ニューヨーク市初の黒人女性警察委員長誕生

2021年12月14日のニューヨークタイムズによりますと、新市長(黒人で元ニューヨーク市警幹部)が、ニューヨーク市警察局(アメリカは自治体警察制度で、市役所内に警察部門があります)の警察委員長(日本なら公安委委員長、警察局、警察官を指揮、監督する組織の最高責任者)に49歳の黒人女性を任命しました。日本なら教育委員会の教育委員長と言うような立場と理解すればよいと思います。アメリカの自治体の委員長は名誉職でなく、大きな権限を持ちます。

日本のマスコミは、アメリカの人種差別問題を盛んに報道します。アメリカには報道の自由がありますから、特派員の追放、逮捕、暗殺の心配もないので、日本の特派員はアメリカの悪い面ばかり報道します。本件(黒人女性の警察委員長就任)はおそらく日本で報道されていないでしょう。

日本では、東京の警視庁の総監が60歳前後、就任。東大卒の男性キャリア官僚です。公安委員長も男性です。それを考えますと、ニューヨーク市の新市長(黒人市長、2人目、ノンキャリの元ニューヨーク市警の幹部)の英断です。

21年10月、女性の研究者、技術者を増やす目的のシンポジウムを開催し、企画と司会進行を仰せつかりました。リモートでお話をいただいたハーヴァード大学建築大学院院長は女性。その他、プリンストン大学の建築大学院長はヴェネゼラ出身の女性、20年前のMITの建築大学院長は南アフリカ出身の女性(ライス大学時代に私の修士号審査教授でした)など、女性の活躍が目覚ましいです。

日本の大学はジーさん教授が退職する時、自分の研究を手伝った後輩の男性講師を後継の教授に指名する人事制度は破壊しないと女性教員は増えません。欧米のような、自由、公募の人事制度にしないといけません。日本文化大好き人間ですが、女性活躍の観点から、日本の人事制度は救いようがない状態です。

日大とミシガン大学の問題処理の違い

2022年1月16日のニューヨークタイムズによりますと、アメリカの名門大学の一つミシガン大学学長マーク・シュリセルが解雇されました。部下の女性と不適切な性的関係を持ったと指摘があり、理事会が調査し、事実と認定、学長に相応しくないとし、直ちに解雇しました。暫定的に前学長(女性)が復帰しました。

日大の田中前理事長は、週刊誌や一般新聞で、10年前から、有名暴力団組長と交際している、建設会社から多額の金品をもらっていると指摘、批判されました。が、理事会、評議員会の皆さん、こと流れ主義か、田中理事長の風貌や言動が怖かったのか、沈黙を続けました。田中理事長は、長期にわたり理事長ポストに居座りました。

本来、大学の理事長は、高等教育機関の経営者として、大学教育の将来像を示し、そのために優秀な教員を集め、優秀な学生を集め、研究費を確保し、大学から多くの論文、研究成果を出すと言ったことをしなければなりません。田中理事長は相撲では立派な実績を残したようですが、博士号を持たず、学術論文も書いていないでしょう。相撲部監督で威張り散らし、威嚇し、そのポストにいた人物が日本で影響力ある大学の理事長ポストにいたこと自体驚きです。まじめな教員、職員、学生、同窓生にとりとんでもない迷惑です。

理事会、評議員会、監査役、特に、法学部長、経営学部長、危機管理学部長など全員解雇すべき、辞任すべきでしょう。また、マスコミで批判された際、田中側の弁護士も建設会社側の弁護士も「調査したが問題ない」と発言。その弁護士もでたらめな調査をし、事実と異なることを発言したのですから弁護士資格を剥奪すべきでしょう。

アメリカの大学(今回はミシガン大学)は正常に組織が機能していると思います。

港区政でも、大声出すパワハラ議員の共産党幹事長がいました。相手を大声で威嚇し、幹部職員はチジミ上がっていました。しかも、高級外車に乗り、高級スーツを着ていました。同僚議員も、幹部職員もだれも何も言いませんでした。私だけが「共産党の区議が高級外車を乗り回すのはおかしい」と批判しましたが。また宴会でホステスのスカートに手を突っ込むセクハラ議員(ベテランの民主党幹事長)もいました。このようなレベルの連中に「先生、先生」と関係者が呼ぶのがおかしな光景でした。

ノーベル賞受賞の度に日本の研究体質の課題指摘

21年10月、日本人(と言ってもプリストン大学研究員)の真鍋淑郎氏がノーベル賞を受賞しました。嬉しい報道です。こうした報道の度に、日本の研究体質の課題指摘がされます。真鍋さんも「好奇心を原動力として研究が少なくなっているようだ」とコメントがありました。新聞の論説記事でも「日本のノーベル賞受賞者が日本の研究環境の悪化を指摘している。真鍋氏も人生の大半をアメリカで過ごしたのは、日本の硬直的な研究体制になじめない優秀な研究者が多いのでは」と指摘がありました。また、別の報道記事で、イタリアで研究を続ける元ピサ大学教授は「イタリアではよそ者が遠慮せずに意見を述べ、皆が耳を傾ける。研究者にとり好ましい雰囲気がある」と語っていました。

欧米のの教授、研究者の経歴を見ると、学部はA大学、修士課程はB大学、博士課程はC大学、そして就職先はD研究所、その後、E大学教授などと多様性あふれる経歴です。日本では同じ大学で、指導教官の弟子となり、研究を継続することが美徳とされています。こうした学習環境、制度を破壊しないといけません。

アメリカ留学、猛勉強の毎日、社交

アメリカ留学、最初は1969年、オハイオ州のThe College of Wooster(早稲田大学の姉妹校の一つ)1年間過ごしました。1年間で9科目を取りました。毎日予習、復習、勉強、勉強でした。ホット一息つけるのは金曜日の夕方か土曜日。

二度目は74年から76年、テキサス州ヒューストン市のライス大学建築大学院。同様、毎日勉強勉強、中間報告、プレゼンの前は徹夜の連続でした。ホット一息つけるのは金曜日の夕方。キャンパス内にあるバー(日本のバーのイメージでなく単に酒を提供する施設)で学生と教授が集まり、ビールの入ったコップを手に、1時間も2時間も議論する社交スタイルでした。お互い酒をすすめることはしません。

読売新聞21年11月の「時代の証言者」で米国憲法学者の阿川尚之氏が「留学で最初の1年は図書館に籠りっきりだった」とのことです。弁護士事務所でインターンをした時のエピソード「仕事をもらい、給料ももらい」、そして社交は「自宅に招かれパーティ、レストランで食事の接待、ミュージカルや野球観戦」が社交だったとのことです。

同感で、私もインターンで仕事をさせてもらい、日本人的感覚からすると高額の給料をもらいました。1975年のインターンの月給は800ドル、24万円でした。日本の大卒初任給は4、5万円だったと思います。

日本では社交というと居酒屋で酒を無理やり飲ませたり、高級ナイトクラブで接待を耳にします。しかしこうした社交方法では女性は参加できません。これからの社交方式を女性も参加できるように変えるべきです。大学の教授法も、猛勉強の学びの方法に変えるべきです。アメリカの大学の授業料は現在、年間500万円、600万円と高額です。学生は、少しでも教授から学び取ろうと必死です。教授も学生からひょうかされますから教育に必死です。教授はいつでも学生の指導、相談にあたれるよう終日大学に籠りっきりです。

日大前理事長、理事、評議員、法学部長、危機管理学部長などに喝!

21年9月、東京地検特捜部は背任容疑で日大本部、日大事業部など家宅捜索をしたとの報道がありました。10月、東京地検は日大理事井ノ口忠男と大阪の医療法人理事長藪本雅巳を背任容疑(板橋日大病院の建替え計画関連で2.2億円以上)で逮捕しました。その他にも背任容疑が複数ルートがあるとのことです。最終的に田中理事長が逮捕されました。

アメリカの大学に留学し、アメリカの大学経営事情を多少知っている立場から以前から日大の理事長の経歴やガバナンスについて疑問に思っておりました。大学の学長、理事長は博士号を持ち、大学の将来構想を作成し、その目標に向かい大学を運営する役割を持っています。民主的な選挙で、品格ある、学識ある人物が、学長や理事長が選ばれます。日本のような文部科学省がありませんから、大学は自主的に、民主的に、厳格に、管理運営され、評議員や同窓会、学生などの声が重要な要素となります。田中理事長は相撲の世界では実績を残した人物ですが、学問の分野では実績はない方でしょう。博士号も持っていません。また、田中の腰ぎんちゃくとも言ってよいのでしょうが、理事の井ノ口も同様、博士号も持たず、ゴマすりと口先と腕力だけで理事になったのでしょう。このようなレベルの人物が理事、理事長に就任することはアメリカの大学では考えられません。田中理事長、井ノ口理事を推挙した時の評議員や学部長等は、今どうしているのでしょうか。想像ですが、田中から投票依頼を受け金でも貰ったのでしょう。こうした理事、評議員等も調査対象とすべきです。

9年前の2013年2月1日の新聞報道で、「日大田中理事長が委託先の建設会社から500万円超を受け取った」と報道されました。疑問の一つ、なぜ、その時、厳しい内部調査がされなかったのか不思議です。その時の日大の顧問弁護士は「指摘の金銭のやり取りはありません」と回答、疑惑の建設会社の顧問弁護士も「資金提供はしていない」と回答。嘘をついた弁護士も同罪です。弁護士資格を返上すべきです。

多くの理事、評議員、学部長など、事なかれ主義のアホンダラだったということでしょう。日大の法学部長、危機管理部長など、肩書だけの人物で、長いものに巻かれろ式の卑しい人間でした。マスコミなどで政府批判や社会批判をする日大教授も多くいますが、自分の組織を公正、適切に運営できない人物が偉そうなこと言うなと言いたい気持ちです。

国際音楽コンクールで日本人若手優勝、入賞。でも外国育ち。

21年10月22日の報道で、ワルシャワのショパンコンクールで日本人の反田恭平さん(27歳)が歴代最高の2位、小林愛実さん(26歳)が4位に入賞しました。さらに、10月30日の報道で、ジュネーブ国際音楽コンクール、チェロ部門で上野通明さん(25歳)が優勝しました。日本人の快挙、嬉しい知らせです。ショパンコンクールの優勝者の中にはマルタ・アルゲリッチさんなど世界的に活動しているピアニストが多くいます。私もアルゲリッチのCDを持っています。

しかし、報道記事をよく読むと反田さんはモスクワに留学し、その後、ワルシャワの国立ショパン音楽大学で学んだそうです。小林さんはアメリカ、フィラデルフィアのカーティス音楽院に在籍しているとのことです。上野さんはパラグアイ生まれ、ドイツに留学したとのことです。音楽分野(他の分野でも共通点がありますが)での海外での教育方法が大きな要因と言えるかと思います。日本の指導者は教育方法、若手の育て方を再考する必要があるのではと思います。

もう一つ感じるのは、マスコミで欧米での人種差別報道を耳にしますが、欧米の審査員は公平公正に審査し、日本人だから、アジア人だからと言った差別意識はなく、良いものは良い、という判定を下しました。日本でのコンクールでは情実のような黒い噂を耳にします。文化芸術分野での指導方法を再考しなければいけません。

アメリカの都市問題の本質大都市より地方都市が深刻

ニューヨークタイムズ21年7月2日、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルグマンの都市問題の論説記事がありました。都市問題(住宅問題、治安問題、財政問題、経済問題など)は、一般的にニューヨーク市などの大都市が、地方都市と比べ、深刻であると印象が強いが、実は違う、地方都市の方が深刻である、との指摘です。同感です。

私は3年前、明治大学ガバナンス研究科紀要論文に「ニューヨーク市の治安政策」を寄稿しました。10万字の論文です。ニューヨーク市の治安状況は大分改善されました。クルグマンによると、オハイオ州の州都中規模都市のコロンバス市の方が犯罪件数は多く申告であると指摘しています。1969年、早稲田大学の交換留学生としてオハイオ州のThe College of Woosterに留学した際、ウースターに行く前にワシントンDCから飛行機でコロンバスに到着、コロンバスからウースターに向かいました。その後、2度コロンバスを訪問しました。現在、コロンバス市は犯罪率ではニューヨーク市よりも高く、危険度が高い都市と言えます。

氏は「深刻な都市問題はルイジアナ州(南部、メキシコ湾に面した州)からミシガン州(中西部)の中規模都市に存在する。」、さらに氏は「そうした地域では、労働力となるはずの男性の失業率が高く、アルコール中毒、自殺、麻薬使用の問題がある。」と指摘しました。

また、産業構造が変化し、知識産業が増加し、その雇用は高学歴者で、巨大都市に集中し、その結果、「大都市に多くの雇用と富の集中が生じた。」、「大都市は悪で、中小都市の方が生活、就業環境が良いという神話は崩壊した。」と指摘しました。

コロナウィルスの蔓延では、大都市の高密度が問題と言う認識をトランプ大統領は持っていました。しかし、氏は「コロナ患者について、サウスダコタ州の死者数は、サウスダコタ州とサンフランシスコ市の人口がほぼ同数であるが、サンフランシスコ市での死者数の4倍。」と指摘しました。密度の問題ではない、と言うのが氏の指摘です。12月31日のニューヨークタイムズによると、ワイオミング州の小規模都市で患者数が相当増えているとの報道がありました。

財政の観点から見ると、氏は「ケンタッキー州は極端な事例で、連邦政府から社会保障、医療保障のなどの補助金は、年間、1人あたりの額は、年間、納税額より140万円も多い。」と指摘しました。

犯罪、雇用、住宅など深刻な都市問題を抱えているのは、地方の中小都市であると認識する必要があります。