7月21日の情報で、アメリカ、ダートマス大学で初の女性学長が誕生しました。ダートマス大学はいわゆるアイヴィーリーグの一つで、名門大学の一つです。シャン・リー・ベイロック女史が、学長選考委員会により次期学長に選ばれました。学長選考のプロセスです。学内に学長選考委員会が設置され、18人が委員に就任、半年にわたり世界中から人材を探しました。委員会は卒業生等に「どのようなスキルが次の学長に最も必要か?」を尋ね、その条件に合う人材を探しました。彼女は脳科学が専門。カリフォルニア大学サンディエゴ校で学士を取得、ミシガン州立大学で博士号を取得しました。現在はバーナード大学学長、その前はシカゴ大学副学長でした。
ベイロック女史の業績説明の中に「ベイロック女史は数学や理科の分野でwomen and girlsを育てた(encourage)」と書かれています。この点、詳細な記述がありませんが、womenは大学生、若手研究者、girlsは女子高校生を意味すると私は判断しました。昨年10月私が企画を頼まれた女性研究者を増やすシンポジウムでハーヴァード大学建築大学院院長サラもトルコのコジャエリ大学建築学部元部長のネヴニハルも「女子高校生に建築に来なさい」とPR活動をしていると発言がありました。日本の大学ではこうしたPR活動はあまりないと思います。
原田のコメントです。日本の大学学長就任プロセスと比較しての相違点、改革すべき点です。一点目、アメリカでは「選考委員会」が設置され、半年かけて世界中の人材から適任者を探す、日本では年功序列で内部登用です。二点目、アメリカの人材の経歴の多様性です。ベイロック女史は学部、大学院、就職先は多様です。ハーヴァード大学建築大学院長もトルコのコジェエリ大学の建築学部長も出身大学は現在の勤務先と別の大学出身で、かつ、複数の大学で教えました。欧米では研究の自由の確保、権力の腐敗防止、そのため人材の流動性を高め、他大学出身者を採用します。日本では30歳前後で助手に就任し、70歳まで教授を継続します。権力者となり、研究の自由が阻害される恐れがあります。3点目、教授、学部長、学長も5年から10年で交代し、他大学や民間企業に異動します。
日本の大学では、卒業した大学と同じ大学か、特定の大学の(国立が多いです)植民地の大学の教員に就職するパターンが固定化されています。(週刊文春のコラムで明治大学教授が指摘)ですから、日本では女性の教員就職の可能性は限りなく低いです。日本では、大学教授は人事権を握り、利権として維持しています。公平、公正さのために欧米のように公正・公平な公募、審査が必要です。