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早稲田大学ビジネススクール・革新的な組織づくり

早稲田大学で商議員を仰せつかっております。12月開催された商議員会で、田中総長の学事報告の後、最近設立された商学部のビジネススクール(大学院)について教授の入山章栄氏の講演がありました。早稲田のビジネススクールは欧米の大学のような組織運営で驚きました。日本の大学改革、グローバル化などの変革の中、意義ある大学改革です。ビジネススクールの創設、運営は田中総長、また、先代の改革派の某商学部教授の改革マインドの結果です。

まず、ビジネススクールの教授陣は多様です。これまで早稲田大学の教授はほとんど母校出身者で固められています。東大含め日本の大学はほとんど母校出身者の教授がほとんどです。欧米の大学は教授の8割は他大学出身者で多様性が確保されています。早稲田のビジネススクールの教授は、具体的には民間の有名なコンサルティング会社のトップ経験者や他大学からのスカウト組です。ちなみに入山氏は慶応大学卒、民間企業に就職後アメリカのビジネススクールに留学し、その後ニューヨーク州立大学の教授に就任、その間、早稲田大学の改革派の教授からスカウトされたそうです。従来、現在も日本の大学教授就任のプロセスは教授のお手伝いなどした弟子を教授が推薦する閉鎖的な人事です。欧米では公募、第三者委員会が採用を決めます。

次に、学生の多様性です。女性も多くいます。留学生も多くいます。年齢の幅も広がっています。企業で中堅幹部として仕事している方が将来のキャリアアップを目指し入学しています。

日本の大学教授は終身雇用ですから、教授が権力を握り、人事権を握り、と閉鎖的な組織です。そうした中、早稲田大学商学部は新たにビジネススクールを創設し、従来と異なる大学運営を始め、高い評価をされているそうです。ビジネススクール設立にあたり、学内で相当な抵抗勢力(従来型のしがらみ型の教授陣)(マスコミなどで教授は社会批評をしますが実は自分たちが守旧派で抵抗勢力です)がいて大変だったそうです。こうした従来型の教授陣を場外に追いやらないといくらたっても女性教員は増えません。日本の大学は30歳くらいで指導教授の覚えめでたいと助手に採用され、70歳の定年まで終身雇用です。変化は期待できません。自分を推進して下さった教授に異なる考えを述べることはできません。早稲田のビジネススクールは外部から教授を招聘する仕組みで、50歳くらいの生きのよい専門家を招聘し、定年までそれほど長くありませんから教授の回転率も良いとのことです。

入山氏曰く、従来の仕組みを変えるのは抵抗勢力が多く大変、新しい組織を作るのが最も早い改革の方法、とのこと。私も同感、教授人事は第三者機関にゆだねるべきです。

ハーヴァード大学学長は昨年までハイチ出身の黒人女性、他大学出身者、コロンビア大学学長はエジプト人女性、ロンドン大学教授だったのをスカウトされました。お二人とも中東問題の処理の都合で昨年退任したのは残念。

田中総長は、早稲田卒業後アメリカ、オハイオ州立大学で10年間勉強しました。体育会の空手部出身、従来の総長と異なる経歴です。早稲田大学ビジネススクールの発展を期待します。

話変わり、教育による経済活性化です。アメリカには100万人の留学生がいます。一般教養大学(リベラルアーツ)で年間授業料500万円以上、メディカルスクール、ロウスクール、ビジネススクール、アーキテクチャースクールなどの専門大学院は年間授業料が700万、800万円です。生活費を含め一人年間1000万円と想定すると、アメリカが留学生から得る収入は単純に10兆円となります。これは日本の国家歳入の10%です。高度な教育、研究、科学技術などが日本経済を支える仕組みを作らないといけません。そこには、女性研究者、女性技術者の参画が必要です。さらなる余談ですが、日本の政治家の意識が低いですから、なかなか女性研究者を増やし、女性活躍、技術研究立国を目指すと発言する方はほとんどいないのが残念です。