アメリカの都市問題の本質大都市より地方都市が深刻

ニューヨークタイムズ21年7月2日、ノーベル経済学賞受賞のポール・クルグマンの都市問題の論説記事がありました。都市問題(住宅問題、治安問題、財政問題、経済問題など)は、一般的にニューヨーク市などの大都市が、地方都市と比べ、深刻であると印象が強いが、実は違う、地方都市の方が深刻である、との指摘です。同感です。

私は3年前、明治大学ガバナンス研究科紀要論文に「ニューヨーク市の治安政策」を寄稿しました。10万字の論文です。ニューヨーク市の治安状況は大分改善されました。クルグマンによると、オハイオ州の州都中規模都市のコロンバス市の方が犯罪件数は多く申告であると指摘しています。1969年、早稲田大学の交換留学生としてオハイオ州のThe College of Woosterに留学した際、ウースターに行く前にワシントンDCから飛行機でコロンバスに到着、コロンバスからウースターに向かいました。その後、2度コロンバスを訪問しました。現在、コロンバス市は犯罪率ではニューヨーク市よりも高く、危険度が高い都市と言えます。

氏は「深刻な都市問題はルイジアナ州(南部、メキシコ湾に面した州)からミシガン州(中西部)の中規模都市に存在する。」、さらに氏は「そうした地域では、労働力となるはずの男性の失業率が高く、アルコール中毒、自殺、麻薬使用の問題がある。」と指摘しました。

また、産業構造が変化し、知識産業が増加し、その雇用は高学歴者で、巨大都市に集中し、その結果、「大都市に多くの雇用と富の集中が生じた。」、「大都市は悪で、中小都市の方が生活、就業環境が良いという神話は崩壊した。」と指摘しました。

コロナウィルスの蔓延では、大都市の高密度が問題と言う認識をトランプ大統領は持っていました。しかし、氏は「コロナ患者について、サウスダコタ州の死者数は、サウスダコタ州とサンフランシスコ市の人口がほぼ同数であるが、サンフランシスコ市での死者数の4倍。」と指摘しました。密度の問題ではない、と言うのが氏の指摘です。12月31日のニューヨークタイムズによると、ワイオミング州の小規模都市で患者数が相当増えているとの報道がありました。

財政の観点から見ると、氏は「ケンタッキー州は極端な事例で、連邦政府から社会保障、医療保障のなどの補助金は、年間、1人あたりの額は、年間、納税額より140万円も多い。」と指摘しました。

犯罪、雇用、住宅など深刻な都市問題を抱えているのは、地方の中小都市であると認識する必要があります。

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