ニューヨーク市とロサンジェルス市の公開設計コンペのニュースです。少し前の資料を見つけました。2000年12月30日Architecture Daily誌によりますと、ニューヨーク市役所住宅局はアフォーダブル(低家賃住宅)の1万㎡規模の設計コンペ内容を発表しました。驚きは、少数派や女性が経営する設計事務所の参加を呼び掛けていることです。日本、東京都などでこうしたコンペはありません。
2000年12月初旬、ロサンジェルス市は低所得者住宅の国際コンペを実施、締め切りは翌年の2月末。世界中どなたでも参加できます。日本、東京都などではこうしたコンペはありません。2000年3月にはロサンジェルス市は街路灯のデザインを実施、市長声明で「世界中の建築家、照明デザイナー、電気議事の皆様、ぜひ、街路灯のデザインコンペに参加してください。」と自ら呼びかけの発言をしました。世界中から知恵を求める、公正に素晴らしいデザインを選ぶ方法は好ましいです。
日本、東京ではありません。国際コンペを実施する能力、意識はありません。まず英語ができません。日本の業者選定は入札が原則、能力、経験、アイデアなどは審査対象外です。入札は会計法に基づき、価格競争が原則です。さらに制限付きで会社規模、売上高など必須条件の入札制度はいずれWTO(世界貿易機関)から日本、東京都は閉鎖的で設計業務の市場開放をしなさいと勧告を受けることになるかもしれません。
パリを訪問すると、国立図書館、新凱旋門、新オペラ座、ルーブル美術館ガラスの入口、ラヴィレット公園、パリ音楽院などの公共事業は観光名所でもあり多くの観光客が訪れます。全て国際コンペです。新凱旋門はデンマーク人、ルーブルは中国系アメリカ人、ラヴィレット公園はスイス人、オペラ座はエクアドル系のカナダ人です。パリ郊外にあるユニークな造形の市営住宅はスペイン人(実際の設計担当者はロシア人)です。誇り高いフランス人もよいデザインを選ぶために公正なコンペで、外国人であっても最適の建築家を選びます。
私自身、港区長時代、フランス大使館の建替えの設計コンペの審査員を仰せつかりました。審査のプロセスを体験しました。真剣で、熱心な審査でした。フランスで建築家の役割は設計課題を作る建築家、コンペに参加する建築家、応募案の技術評価をする建築家と3つの役割があることを知りました。
昔の話ですが、カナダのトロント市庁舎はフィンランド人、オランダ、ハーグの市庁舎はアメリカ人、ヘルシンキ美術館はアメリカ人と国籍に関係なく良いデザインを選ぼうと世界中に声掛けします。若手日本人建築家も活躍しています。最近のArchitecture Daily誌によりますと、ロシアのノヴゴロドのドストエフスキー劇場の保全の設計コンペが実施されました。中国、上海の広場の設計もコンペで建築家が選ばれました。共産主義の国でも設計者選定はコンペが多いです。