新国立競技場、いくつかの課題

1 設計競技の手続きの問題:フランス政府の設計競技の審査員を務めました。その経験から、手順に問題があります。フランスの大使館建替えで建築家選定の設計競技です。異なる建築家が専門家として段階ごとに参加しました。まず、課題作成の段階(複数)。次に、設計競技に参加する建築家5名。次に、競技案を技術的に審査する建築家数名。それに本審査を担当する建築家。(本件の場合、外務次官を委員長とし、外務省の施設部長、在日フランス大使、フランス人建築家3、4名、それに原田敬美です。)新国立の場合、このような方式になっていません。また、所謂大学教授は関与しません。日本は大学教授の権威を過信しております。フランスでの審査会の様子です。審査員が真剣に意見交換をしました。今回の審査の議事録は公表されるべきです。フランスのように各段階を設定し、段階ごとに多くの建築家が関与すべきでした。日本の建築界も本競技に関し傍観者でした。審査員の人選に問題がありました。

2 案の選定、価格の視点。審査員が高い評価をしても、価格が設定条件をはるかに超えれば条件違反で失格です。本件でこうした明確な規定を設け、予定額(1300億円)の倍以上となる、予定額をはるかに超える案を失格にすべきでした。

3 将来の維持費の問題。都庁舎の建設費は1500億円でした。17年目の大規模修繕で700億円要しました。単純に同じ比率とすると、新国立竣工後17年目に1300億円の大規模修繕費が必要となります。その頃、国にそのような財源はあるのでしょうか?

4 政治的責任:自分の時代は何とか切り抜け、問題を先送りするパターンはよくあることです。将来に課題を先送りする手法は問題です。

5 外国人建築家に率直に意見を言えない役人。もし、1等賞が私なら、おそらく、役人から呼び出され「原田さんのデザインは良いが、コストが予算の倍だから辞退届を出せ」と強引に権威的に言ってくるでしょう。外人には何も言えない役人体質は問題です。東京国際フォーラムでも、横浜の大桟橋の建設で同様の問題がありました。

6 都知事のマナー。舛添えさんはパーフォーマンスの得意な政治家。文科大臣に辞任を迫りました。でも、本来都知事がオリンピックのホストです。東京都が自ら競技場を建設しなければなりません。コストなどの問題から国立競技場を使わせていただくのですから、都知事は文科大臣に「国立競技場を使わせていただきます。予定通り竣工しますようお願いします」と頭を下げるのがマナーです。でなければホストですから自らオリンピック用に都立の競技場を建設すべきです。

7 新宿区役所の都市計画の問題。この点、マスコミなどで問題になっていませんが、敷地周辺は本来都市計画で高さ制限があったはずの場所。国策だからと巨大で高い建物が建つように都市計画を変更したこと自体も問題とすべきでしょう。高さの問題ももっと議論するべきでした。

見直しでより適切な案が登場することを期待します。

 

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