アメリカの大学の親切さ、日本の大学は?

1969年早稲田大学の交換留学生としてアメリカに1年間留学しました。いずれアメリカの大学院で建築の専門的な勉強をしたいと思い、多くの大学院に案内書を請求しました。B-5サイズ程度、厚さ2㎝位のカタログが送られてきました。無料です。カタログには大学の理念、シラバス(授業内容)、入学志願の手続き、教授陣リスト、教授陣の経歴などが記載されています。手紙が添付され、「我が大学にご関心を持っていただきありがとうございます。何かご質問がありましたらご遠慮なくご連絡ください」と書かれていました。日本に帰国後も多くの大学にカタログ(案内書)を請求しましたが、航空便で送られてきました。日本の大学でこのようなサービスをする大学があるのだろうか?と思いました。こうした親切な対応があるから、世界中の若者がアメリカの大学で学ぼうという気持ちが湧いてくると思いました。

カリキュラムを見ると面白いことがわかります。①一斉入学試験ではありません。書類選考です。海外から気楽に応募できます。3通の推薦状、応募理由書、成績証明書、自己PR(クラブ活動、地域活動、専門分野の能力の自己PRなど)、外国人の場合に英語能力を証明する試験成績書(TOEFL、TOEIC)などの書類を提出します。②日本にないダブル・ディグリー・プログラム(1度に2つの修士号を取得する)、おそらく未だに日本の大学ではこうしたカリキュラム体制はないと思います。③教員の経歴を見ると、学士、修士、博士の学位を取得した大学がほとんどの場合、異なる大学であること(日本では、学士、修士、博士、ほとんど同じ大学です)、④大学教授はほとんど他校出身者であること。(しがらみ、利害関係を排除し公正な大学運営をおこなうため)こうした点も日本の大学は参考にすべきです。

私は、最初の留学の時に友人や先生方から建築の大学院ならヒューストンのライス大学がいいと話を聞いていたので、(小規模大学、ヒューストンという都市は面白い(当時人口100万人から現在200万人で全米第4の都市に発展、建築や都市を勉強するのに適格)ライス大学に絞っていました。早稲田の大学院生の時、ライス大学に入学したいと経歴書や研究実績やデザイン受賞の実績を送りましたら、驚きました、学科長から「あなたを受け入れます」と返事がありました。入学合格の手続きが非常に弾力的です。こうした選考方法も面白いと思いました。ライス大学の学科長は、私の2度の留学、日本の建築学会などでの論文寄稿実績、日本建築学会での設計競技の入賞歴などで問題ない志願者と判断したのでしょう。

大学から定期的に送付される同窓生向けパンフレット。最初の留学先のThe College of Wooster, 2度目のRice Universityと2つの大学から春夏秋冬、週刊誌程度のニュースレターが送付されます。また、大学学長から「Keimi Harada」と宛名が記載された手紙(大学の近況など)も送付されます。無料です。日本の大学でこのレベルのサービスをしている大学があるでしょうか?こうしたサービス内容も日本の大学は参考にすべきです。

私は独立自営の立場ですが、現在でも時々国際会議や海外の大学に招聘され講義、講演をします。その時面白いことを発見、体験すると、せっかくだからと思い母校の総長あてに手紙を書き、資料を添えて送ります。私自身港区長を体験し、投書などの取り扱いに慎重に丁重にしておりました。「お手紙ありがとうございました。大学運営の参考にさせていただきます」などの返信は全くありません。ご多忙な総長から直接返信をもらう期待はしませんが、組織として総務課長、秘書が代わって、そうした投書に対応するのが社会マナーです。そういう点、母校のシステムは大きな問題アリです。世界大学ランキングが報道されますが、そうしたサービス精神も上記の内容と含め、低く評価される要因の一つと思います。総長、役員、事務局スタッフはもっと世界の大学の諸状況について勉強すべきです。感覚が明治時代の象牙の塔を未だに抱いているように感じます。テレビなどで大学教授は評論家として政治、社会批判をしていますが、最も批判されるべきは欧米の大学と比べ、旧態依然たる、サービス精神に欠如した大学かもしれません。

 

 

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