フランスの設計競技で建築家の3つの役割

2002年フランス外務大臣から依頼され、港区南麻布にあるフランス大使館建替えの建築家選定の設計競技の審査員を務めました。想像ですが、フランスの建築界の大御所から私を審査員にと外務省に推薦があったと思います。考えられる理由は3つで、私が立地する港区の区長であること、私は大使館の隣に住む隣人であること、建築家であることだと思います。
審査日程がたまたま春の連休でしたので、審査のためパリまで行きました。そこで、外務次官を委員長とする審査会の真剣な議論とフランスの建築家の果たす異なる3つの役割を知りました。
1番目は、設計競技の課題を作ることに協力する建築家集団の存在です。様々な技術基準の検討です。
2番目は、当然、設計競技に参加する建築家集団です。この件では5組の建築家が参加しました。
3番目は、審査にあたり、審査員が審査をスムースに進行するために、また、議論の的を絞るために、提案内容について、前裁きをする建築家集団の存在です。
建築家がこのような方法で設計競技に参加し、より良い建築を創り出すという方法を日本でも採用すべきと思いました。個性の強い建築家ですが、職務のために一致団結してそれぞれの役割を果たしたと思います。
朝から夕方まで真剣に審査に参加し、大変疲れましたが、良い疲れ方でした。わずかな休憩時間のコーヒーと文字通りの軽いランチでした。
後日談。建築家が決まり、やれやれと思っておりましたら、政権交代で外務大臣が交代。案は差し戻し、ゼロからの再出発となりました。その後、フランスの財政状況悪化で、民活で建替えることになりました。日本の建設会社、商社、不動産会社の共同チームによる建築となりました。日本人のデザインです。
ちなみに、当初のフランス大使館はフランス建築界の大御所ベルモン氏の設計、その協力者は私の先生の菊竹清訓氏です。お二人とも30歳頃の仕事です。若い時から凄い能力を発揮していたと驚嘆です。

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です