DZと言うイギリス系の建築の専門誌に求人広告が掲載されています。その中でコーネル大学の教員の公募広告の紹介です。DZ23年10月号です。デザインと建築技術分野で、助教授、准教授の公募広告です。大学の方針は「これからデザイン・テックの分野、AIの分野に力を入れ、デザインと科学との融合を目指します。コーネル大学は現在変革期にあります。インクルーシブな元気のある大学社会を構築したいと考えています。デザイン学部の狙いは、クリエイティブと批判的な見方、サステイナビリティと社会に衝撃を与えること、デザインと新たな技術開発、都市のデザインと革新的な世界に作り変えることができる能力開発を目指します。このような考え方に賛同する方の応募を期待します。なお年俸は9万ドルから14万ドル。1ドル150円とすると1,350万円から2100万円。日本の大学の教員採用も、このような公募方式で広く広告し、多くの志願者から適任者を採用する方式が日本でも主流になることを祈っています。
イリノイ工科大学(IIT)学科長ヴェネゼラ出身の女性建築家就任
アメリカ建築家協会誌(AIA)9月26日の記事の紹介です。イリノイ工科大学のランドスケープ・都市計画学科長にマリア・ヴィラロボス女史が就任しました。IITはシカゴ市に立地、世界三大建築家の一人ドイツ生まれのミース・ファン・デル・ローエがナチを嫌いアメリカに移住し、IITの大学院長に就任、発展させた大学です。ヴィラロボス女史はIITで初のヒスパニック系の幹部教員です。彼女自身が就任したことで、IITの「イクイティ、正義」を教科内容に反映させることができます。彼女はヴェネゼラ生まれ、2019年IITの教員に就任、2023年准教授に昇格、今回学科長に就任。彼女はシカゴ市の都市計画にも大いに貢献しました。専門領域で様々な受賞歴があります。日本の大学、企業も「イクイティ、正義」を大学経営理念、企業の経営理念に取り入れるべきです。
テキサス大学アーリントン校建築大学院長公募
イギリスの建築雑誌DZの23年10月配信記事にテキサス州立大学アーリントン校の建築大学院長の公募広告がありました。テキサス州ダラス近くにに立地するテキサス州立大学の一つです。学生数4万人です。アメリカ連邦政府から「ヒスパニック系、アジア系アメリカ人、インディアン(先住民族)、太平洋諸島のアメリカ人学生の支援」のモデル大学に指定されています。応募の条件は専門知識と社会常識の2分野です。
一つは専門知識や資格の有無です。専門的資格、経歴、受賞歴などです。革新的な建築・インテリア教育の能力、カリキュラムの改革、組織の発展、組織文化を構築する能力、卓越したコミュニケーション能力が要求されます。
もう一つの条件は社会常識、これは日本では見られない内容です。日本の大学も大いに採用すべきです。不当な差別(ハラスメント、人種、民族、宗教、年齢、性別、性的し好、妊婦、障がい者など)を許さないと言うことの理解、認識が問われています。何らかの障害があれば大学が支援する、と記載されています。企業でも共有すべき内容ですが、日本の大学管理者、経営者がこうしたことを理解しているのか疑問です。日本の大学も公募(形だけでなく本当の公募)を採用すべきです。
日本の大学教員は公募でなく特定の教授からお声をかけていただく人事です。読売新聞10月26日に元上智大学学長の石沢良昭氏の「時代の証言者」で「地方の大学に出張の度にこんな院生がいますから是非使ってやってくださいと売り込みます。」
女性建設労働者を増やすため、アメリカBuildersの記事
アメリカのBuildersという住宅建設の業界紙を読んでいます。10月号に女性の建設労働者を増やすための論説記事がありました。寄稿者は某住宅建設会社の女性社長です。
女性建設労働者が増えつつあります。また、女性建設労働者を受け入れる余地があります、と言う内容です。彼女のコメント概要の紹介です。1 自分が仕事を始めた80年代、女性はほとんどいなかったが、今、女性建設労働者が増えつつある。2 2016年から2021年の間32%増えた、3 建設労働者(管理職含め)の83%が男性で、まだまだ女性が増える余地がある。4 女性の応募者を増やすカギは次のとおり。①女性労働者のための指導員を増やす、②女性労働者が働ける環境を整備する、③フレキシブルな働き方を整備する、④安全を確保する、⑤女性労働者を支える組織を整備する、の5点です。以上5つの鍵は建設分野の女性労働者ばかりでなくあらゆる分野に共通する内容です。
AIA(アメリカ建築家協会)サステイナブルデザインの専門家紹介。多い女性、民間人
AIA(アメリカ建築家協会)誌の10月2日配信の記事です。今の時代重要なサステイナブルデザインの専門家紹介です。10名が紹介されています。内、女性建築家が6名です。また、10名の内、9名が設計事務所勤務の方で大学教授は1名です。日本ですとこの手の専門記事の場合、登場するのは男性、大学教授が圧倒的に多いです。民間に優秀な人材が多くいますが。
30年前、恩師である建築家菊竹清訓氏と大成建設のS社長を訪問した際の会話を今でも覚えています。社長は菊竹先生の同級生、菊竹先生が国際会議の応援を依頼し、社長から即「承知」と回答があった後、面会予定時間の残りの時間を、S社長は母校である早稲田大学建築学科からの学会論文、博士論文の少なさを率直に批判、「わが社の研究所の方が学会論文、博士論文は多い。大学の研究は遅れている。」との内容でした。
カリフォルニア大学バークレー校求人広告、DE&Iの小論要求
Dezeenというイギリスを中心とする建築専門誌があります。その中に求人広告も掲載されています。目を引いたのは名門大学の一つカリフォルニア州立大学のバークレー校建築学部の助教授募集の広告です。応募の際、履歴書、実績証明書類の提出は当然ですが、さらに応募者が「ダイバーシティ」(多様性)、「イークイティ」(公平性)、「インクルージョン」(包摂性)についてどう考えているか書きなさいと要求事項があります。ついに出たかと言う印象です。
日本の大学、企業、公務員試験でも、採用の際必ず要求すべき項目です。特に男性に対し「私はセクハラ行為をしません、パワハラ行為をしません。」と誓約させるのも一つの手です。さらに、日本の大学教授の一部にはアルバイトが過ぎる方がいます。また、マスコミも愚かだから「大学教授」と言う肩書、権威に拘り、テレビなどにコメンテーターで出演させます。極端に週一回出講し、後はアルバイト三昧と思われる教授もいます。アメリカの大学教授は教育、研究に専念ですから、アルバイトはほとんどできません。アメリカのテレビで、コメンテーターは民間企業の専門家、専門のコンサルタントなどです。大学教授採用の際、「アルバイトしません。」と誓約させるのも大切です。日本の大学の評価が低い理由の一つです。
敷地6坪の住宅設計
敷地6坪の住宅設計を依頼され、2023年春竣工しました。極限の極小住宅です。コンクリート造4階建て、茶室を4層積上げたような形式です。某役所の開発事業で残った土地6坪に住宅を建てたいと言う意向。クライアントは単身のご婦人。某役所の開発事業で役所に売却し、残った土地が6坪です。補償金で広いマンションに移転することも選択肢であったと思いますが、生まれ育った思い出の地と言うことですみ続けたいとの意向でした。
役所の方のご紹介で、「悪質な建設会社やハウスメーカーに引っかかると、追加工事等の名目等(よくある話ですが)で受け取った補償金が奪われる恐れがあるので原田さんに設計、監理をお願いしたい。」と紹介されました。半年以上の間、クライアントと会話を重ね、ご希望、ご意見をうかがいながら平面計画案とその模型(素人の方には模型で見ていただくのがベストです)を10案以上作成し、設備機器、壁紙などもすべてご自身に選んでいただきました。希望とおりの住宅ができたとご満足いただけたと思います。建築家冥利に尽きる仕事をさせていただきました。
学び直し・ジョョブ型 労働市場改革
4月12日政府は新しい資本主義実現会議で、労総市場改革の方向性を示しました。日本では、多くの場合学校卒業後同じ会社に定年まで勤めることが一般的です。しかし、産業構造の変化、社会経済の変化の中でそうした雇用制度、教育制度の大きな改革が必要です。欧米での体験です。メジャーリーグで活躍した選手が引退後、医学大学院に入学し、医者になる、警察官になる、企業経営者になるなど、多様です。何度の学び直し、次の人生を目指すことが可能です。以前も紹介しましたが、友人のオーストラリア人が70歳になって博士課程に入学し、博士号を取得し、その後社会貢献する、と言う脳力活用の社会です。景気の変動に伴い、景気が悪くなった会社からこれから発展が見込める分野の企業に転職し、これまでの経験を活かす仕組みを整備する必要があります。欧米の大学は何歳になっても入学できる弾力性、多様性があります。また、アメリカにはコミュニティカレッジという学び直しに都合の良い公立の短期大学も多くあります。
世田谷区新庁舎建設、半年遅れ 監査は機能しなかった
5月31日の新聞報道で、世田谷区役所の新庁舎の建設工事、第一期工事の竣工予定が9月までだったのが半年延期になるとのことです。以前本欄でも書きましたが、町田市の図書館が工期3か月遅れで施工した東急建設は1年間の指名停止処分を受けました。単純に二倍の2年間の指名停止処分に値すると思います。それと気になるのが、監査委員の監査体制です。工事が適切に進んでいるか、お金がが適切に使われているかチェックするのが監査事務局の仕事です。監査委員も同様に責任があるということです。
東京医大、女性差別不正入試について二審で賠償額増額命令
5月31日の報道で、30日高裁の控訴審判決で賠償額を増額する判決がありました。「2006年から18年の医学部入試で女性や一部男性が不利となる特定調整を行った。」と認定しました。差別を禁じた憲法や教育基本法に反するとの判決です。アメリカの裁判なら賠償額のゼロが二けたか三桁違います。
アメリカでは罰則的な高額な金額の損害賠償額が出ます。こうした判決のあと、女性の社会参画を訴え、活動している専門学会などがアッピールしたのか疑問です。大学と言うことで身内びいきで、遠慮、腰が引けています。本来、こうした事件では大きな声を上げ、声明を出すべきです。そういう活動をしないことも問題です。