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讀賣新聞 昭和57年(1982年)5月13日(木)

論点
まちづくりと市民学習
原田 敬美 (建築家)


 まちづくりの動きをみると、コミュニティー・ケア、セルフヘルプ (自助努力)、政策決定への市民参加というように、幅広く市民を巻き込む傾向がうかがえる。市民をあくまで主人公とし、コミュニティー自律のため、幅広い市民参加が望まれるところである。
 ところが、現実には、市民はまちづくりにどうかかわってよいか、自分は何ができるのか分からなかったり、学習しようと思っても、何から手をつけてよいか、きっかけをつかめず悩んでいる。
 バラエティに富んだ学習メニューが目の前に並んでいる。学校教育、社会教育、公共職業訓練、保健福祉、文化・地域団体、消防・警察、電力会社、商工会などの行う各種講座である。一見、豊かな学習機会に恵まれているようだが、さまざまな問題点が指摘されよう。
 (1) 高名な講師の話を生徒は一方的に聞き、授業が終われば散会、市民的交流がない。
 (2) 講座は座学一辺倒で、学んだことは自己完結型で、地域社会への還流はない。
 (3) 学習内容が老人、婦人、青少年、勤労者、障害者と対象別で、地域社会を崩壊させている。
 (4) 各種団体の学習内容は重複し、相互の有機的関連性に欠ける。
 (5) 育児中の婦人、域外通勤者、障害者にとって学習上の空間的、経済社会的、時間的障害がある。
 (6) 学習二―ズの多様化にかかわらず、社会教育は旧態依然である。
 (7) 民間は利益追求主義である。
 (8) 大学、高校といった学校教育は、体質的に閉鎖的である。
 ところで、アメリカには市民レベルの学習機関として公立のコミュニティーカレッジがある。すべての市民に開かれた学校で、地域の核である。市民として必要な生活・社会技能と、地域の生産活動(地場産業や地域商業)に必要な専門技能の習得と、2つの内容を持つ 。
 運営は、いつでも、だれでも、どこでも、なんでもというオープンドアの理念に立つ。現在1300校ほどあり、多くは独自の施設を持つが、民間施設や小中学校の施設を借用しているものもある。
 ミシガン州バトルクリーク市(人口39000人)は、まちづくりと市民学習のかかわりで興味深い。 住環境の質向上を図るため、市が住宅修理の講座をコミュニティーカレッジで開いた。週2晩8週間、基礎的な日曜大工の技能コースである。講師は地元の建築職人である。自分の家を修理することで、まち全体の環境を改善するセルフヘルプのまちづくりの典型例である。
 国情の違いから直接的導入は難しいが、多くの示唆に富む。
 まちづくりと市民学習は表裏一体のものとしてとらえる必要がある。そのためにはまず学習運営上の交通整理である。自治体がコーディネーターとして学習情報のまとめ役となり、バラバラに行われている既存の学習を、市民の立場で有機的にネットワーク化する。
 次に、学習内容の充実である。まちづくりに参加するための道具を学ぶという視点が必要である。
 コミュニティー・ケア推進なら、寝たきり老人の入浴のさせ方という老人介議の技能。地域の連帯感高揚なら、ミニコミ紙作りの印刷技能。都市計画事業実施なら、形式的な説明会ではなく、都市計画に関する知識・教養。
 セルフへルプ方式の近隣環境改善なら、のこぎり、かなづちの使い方、植木、花壇の手入れという日曜大工技能。
 政策決定への参加なら、スピーチ、会議運営の社会技能。さらに、地域生産の担い手である勤労者の専門技能訓練 (東京のような大都市でも勤労者の73%が社内研修に恵まれない中小企業に働く)といった例示ができよう。
 学習の有機的ネットワーク化によって、老人、婦人、青少年、障害者、域外通勤者、域内通勤者といった地域の構成員が融合され、多くの市民を巻き込んだまちづくりが推進される。
 その結果、自律性あるまちづくりが可能となり、今日の異常に専門分化・機能分化したまちが統合され、有機的なまち空間が形成される。
 学習については、公共と民間の役割分担の議論があるが、市民の資質向上と、まちづくりに生かされる学習であれば、公共が積極的に市民のため、学習機会の整備に着手すべきである。


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