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日本ボクシング連盟前会長の不祥事に見る日本のガバナンスの問題

2018年夏、突然週刊誌や新聞で日本ボクシング連盟会長の不祥事が報道されました。12月最終的に除名されました。連盟の公金を不適切に使ったこと(新聞報道で2015年から17年度使途不明金が2400万円あったとのこと)、審判の不適切な判定、不適切な組織運営などが指摘されました。

数年前柔道連盟で政府から支給されるコーチの報酬を理事長の命令(恫喝?)で1/3が理助長に渡され、そのお金を理事長が不適切に使ったなど問題指摘されました。いつもの繰り返しでまたか、という思いを感じました。

前ボクシング連盟会長はボクシングの専門家でなく、たまたま偶然の流れで理事長に就任したようです。現場と経営が離れていても問題ありませんが、理事長にふさわしい資質かどうかがポイントです。見た目で人を判断してはいけませんが、私が抱く組織のトップのイメージとおよそかけ離れています。言動、服装など。

日本ボクシング連盟の問題として、なぜこうした人物が理事長に就任し、かつ、膨大な使途不明金が出ても役員がチェックできなかったか、という問題があります。日産、東芝、オリンパス、日本航空など、すべてに共通する問題です。

私が勤めた港区役所も不適切というより不法行為(官製談合、開発利権)が多くありました。私はトップ自ら一所懸命不正を撲滅し、改善、改革をしました。大きな成果が出せたと思います。おかしいことはおかしい、間違っていることは間違っていると明確に発言しなければいけません。相当反発がありましたが、正しいことを発言したのですから気持ちはさわやかです。不正を続けると病になる方が多いです。

金融都市、国際金融の実情は情けない。高額な海外送金手数料、外貨交換の営業時間

国際建築アカデミーの客員教授と評議員を務めています。本部はブルガリアにあります。年会費は300ユーロ(約4万円)。弊事務所の近所の三菱東京UFJ銀行から振り込み依頼しました。なんと送金手数料が4000円です。送金額の10%です。しかも送金ルートはまず三菱東京UFJのヨーロッパ支店に送金、そこからブルガリアの銀行の口座に送金されるので数日かかるとのことでした。

歴代の東京都知事は東京を国際金融都市にすると演説しています。わずかな送金で(マネーロンダリングなどの不正送金でありません)手数料が10%、送金の時間に数日要することを「金融都市づくり」担当の東京都の職員はご存知か?

また、外貨交換所も銀行内では午後3時で閉店。土日は閉店。欧米の都市と比べ外貨交換所は都内に少ないです。東京都観光部職員、観光庁職員はこうした実態をご存知か?知事や副知事、局長など、自ら外貨交換所に足を運んだこともないでしょうし、海外送金のご経験もないでしょう。こうした実態を知らずし、「国際金融都市」を語るのは滑稽です。制約や規制だらけ(東京都の所管でなく金融庁マターですが)で金融都市は作れません。

ニューヨーク市は市長の方針で「ウォールストリート経済」から「観光・文化・芸術都市」にシフトしています。国際金融は私は全く素人ですが、経験的に言えば、金融は歴史的にユダヤ人などが得意とする分野で、日本人にはもっとも向かない業種です。日本は丁寧なコツコツものづくりが最も得意な分野です。

東京駅案内所夜9時には閉鎖、観光機能を果たしていません。

昨年2018年10月ハンガリーでの国際会議からイスタンブール経由で成田空港に戻りました。JR総武線快速で夜9時頃東京駅に到着。子供から連絡があり、ある薬を買ってきてほしいとの依頼。東京駅には薬屋があると思い、駅構内の案内書をサインで見つけ案内所に到着。なんと既に閉鎖されていました。駅の業務時間(利用者がいる間)は案内所に職員が勤めてなければなりません。日本人なら何とかなるかもしれませんが、外国人はどこに尋ねたらよいか困るでしょう。JRにこうした心配りができる担当幹部社員がいないのですか。観光を理解する職員がいないのでしょうか。欧米各国を訪問した経験からすると大都市の中核駅で案内所がない(夜)ことはあり得ません。国土交通省観光庁、東京都などは観光、おもてなしと騒ぎまくっていますが、日本、東京の観光の実態はこの程度かと驚きました。

東京駅の広い構内で2,3のお店の店員に「薬屋さん知りませんか?」と尋ねました。回答「さー?分りません」でした。

東京都庁の観光部や区役所の観光担当課の職員、こうした実態ご存知ですか?ついつい、言いたくありませんが、バカ役人がとつぶやきたくなります。

ニューヨーク市の1990年代の治安政策論文、10万字書きました。

ライフワークの一つで「ニューヨーク市の1990年代の治安政策」論文を書きました。約10万字です。アメリカ2度とスウェーデンに留学し、その後課題意識として感じたことをライフワークとして小論にまとめるようにしています。3年前「ニューヨーク市の都市開発と観光政策」、2年前「東京都とニューヨーク市の監査報告の比較分析」、昨年は「アメリカの環境政策の変遷」について小論を発刊しました。港区政についても3本都市計画学会学術論文(審査付き)に寄稿しました。自らの仕事を学会論文に寄稿する首長は少ないと思います。財政論文(23区のバランスシート分析)も書きました。

1990年ニューヨーク市の殺人事件犠牲者は2245人、以降急激に減少しました。現在は300人弱です。急激に減少した原因を分析しました。特に変化の大きい時のニューヨーク市警察局の警察委員長(東京都では公安委員長)の2人にスポットライトを当て、その人物像、発言内容、治安戦略をニューヨークタイムズはじめとする新聞記事、連邦司法省捜査局(FBI)資料、専門書などの資料を基に分析しました。奥の興味ある発見がありました。4月に発刊予定です。後日インターネットでも閲覧できます。乞うご期待。

私は20歳の時アメリカ、オハイオ州のウースター大学に交換留学しました。毎晩NBC放送のニュース番組を見ていました。その時、事件があると直ちに警察本部長、公安委員長など責任ある立場の人物が事情説明をします。日本の事件報道と全く異なります。若いながら、責任ある立場の人物がどのように説明をするか、不祥事などの場合、トップがどのように謝罪、説明するのかニュース番組を見て学習しました。こうしてみると日本の組織のトップのだらしなさを痛感します。昨年の大阪府警富田林署の不祥事でも署長もましてや府警トップの広田氏(1月辞任予定:責任取り退職させられたのでしょう)の事件直後の記者会見、説明、謝罪もありませんでした。幹部としての教育を受けていない、学習をしていないと思いました。その他日大の不祥事の際も事件直後の理事長の記者会見がありませんでした。私の上記の小論は、事件が生じた際トップがどのような発言をしたかも多く記述しました。日本の組織のトップにも目を通してもらうとトップ学荷役に立つと思います。

日本航空の乗務員の非常識、破たん後も続く。自覚の欠如。

2018年11月、日本航空の副操縦士がロンドンで乗務前の飲酒で逮捕されました。内部検査ですり抜けたようです。身内意識で同僚のパイロットや客室乗務員がかばい沈黙したのでしょう。乗務員を輸送するバスの運転手の通報で警察が逮捕しました。バスの運転手の機転と正義感です。バスの運転手が酒臭いにおいを感じたのですから、一緒にバスに乗車していた同僚たちも気が付いていたのでしょう。そういう点では同罪です。

2010年日本航空は東京地裁に会社更生法の適用を申請、事実上の破たんです。2兆3000億円の負債です。公費で再建しました。そういう自覚が酔っ払い乗務員や社員に自覚がないことが残念です。

破綻前に聞いた話。日本航空のパイロットは週一勤務、ハイヤー通勤、年収は3000万円。キャビンアテンダントも高卒40歳で年収1000万円。90年代アメリカのユナイティド航空のキャビンアテンダントの時給は1400円。それが世界の相場です。海外のパイロットは週3回勤務で年収1000万。それが世界の相場です。経営学の専門家ならずともいずれ日本航空は破たんすると思っていました。ガバナンスの欠如、乗務員の横暴、横柄、親方日の丸感覚、経営者が労働組合と喧嘩したくないので甘い態度で労働条件を認めた、双方とも会社を食い物にした、国民を食い物にしたということでしょう。今問題になっている日産のゴーン氏、会社を食い物にしたと非難されていますが、法的にも、日本航空の社員も同様です。

公的資金(税金)で立ち直ったのに、その自覚がなく、酔っ払い操縦をしたのは言語道断です。日本航空に乗る時(最近はほとんど使っていませんが)、機長やキャビンアテンダントに酔っぱらっていないか確認の声掛けをする必要があります。

スポーツ選手とアメリカの大学の指導内容

ゴルフの倉本昌弘氏が週刊新潮で「アメリカの選手はなぜ大学で伸びるのか」(2018年6月28日号)、「ダメだと言わないアメリカ式指導法」(2018年7月5日号)、「大学でゴルフの専門家になれるアメリカ」(2018年7月12日号)と連続でスポーツ教育とアメリカの大学での指導方法の素晴らしさについて語っています。

そのポイント。倉本氏は大卒後すくテネシーに留学した。その理由は「アメリカのゴルファーが大学生になった頃から急速に成長する。その秘密を知りたいと思った。」「アメリカのスポーツ教育の特色は、野球、水泳、テニス、ゴルフ、フットボール、陸上、サッカー、バスケット、レスリングなどいくつものスポーツを経験することができること。」、と書いてあります。同感です。日本は一つの分野にこだわり、横のつながりがありません。

タレントとしても有名だったプロレスラーのデストロイヤー氏に直接聞いた話です。氏はアメリカの名門大学の一つシラキューズ大学、大学院卒。「学生時代フットボールの選手だったが、監督から、タックルの勉強のためレスリング部に入りタックルの方法を学べ、と言われレスリング部でも稽古した。」「たまたま日本でプロレスの興行に参加してはと誘われアルバイトでプロレスに出場、プロレスで有名になったのでそのまま続けた。」とのこと。氏はレスリングの他、野球、水泳の指導員の資格を持ち、地元で子供たちにそれぞれの分野で指導しているそうです。現在年齢的には90代ですから、その年齢で名門大学卒、しかも、スポーツの修士号を持っていることは、日本のスポーツ家と比べ、教養、能力の幅の広さに驚かされます。アメリカではそれが普通です。

アメリカのスポーツ教育の特徴の2。コーチの言葉づかい。教える姿勢。倉本氏は「日本の指導者の大半は欠点を見つけそこを直せと指導する。アメリカのコーチは選手と議論し「何をやりたいか」聞き、コーチは選手をサポートする役割である。命令する立場でない。選手の意志が常に主体である。」と書いています。

「アメリカの大学でのゴルフ教育の特徴。アメリカでは大卒でゴルフ協会の資格が取れる。ゴルフの経営学やゴルフの指導方法を学べる。日本ではそうした教育課程はない。」と書いています。

私の専門の建築教育でも同感。だから私はアメリカに留学しました。港区長時代、元区長S氏(私を後継者に引っ張り出した方)、私の区長時代の政策経営部長だったN氏(その後副区長、現在は港区の文化スポーツ財団理事長)から留学の話をするなとお説教。N氏は、上記の倉本のようなスポーツ教育理論はゼロ。単なる天下り人間。スポーツも文化を理解しない人物が港区の文化スポーツ行政のトップでいます。不適切な人事と言えるでしょう。

数年前柔道連盟で不祥事がありました。その時、女子チームの監督が「ブス、デブ」と言った言葉で女子選手を指導(?)。その監督は退任しましたが(させられましたが)、欧米なら女子選手から人権侵害で監督の柔道連盟も訴えられ高額の慰謝料を払うことになるでしょう。指導者の指導方法を教える教育プログラムがありません。大学などで指導者の指導方法を正課として教えるべきでしょう。この点も日本のスポーツ界は遅れています。

日大のアメフト問題と日大理事長の経歴

2018年5月の日本大学と関西学院大学とのアメフト定期戦で日大選手が悪質なタックルを行い、それが日大内田監督、コーチの指示だったと露見しました。そうしたトラブルの中で日大田中理事長の経歴を知り率直な気持ち総長としての資格に違和感を感じました。

私の手元に1967年早稲田大学一年生の時の英語教材があります。グレイソン・カーク(Grayson Kirk)コロンビア大学学長が創立200年の記念式典でこれからの高等教育機関の果たすべき役割について演説原稿です。18歳で大学の事情も分からないながら、教材(演説原稿)を呼んで偉く感激した思い出があります。総長の役割はそうした将来の大学のヴィジョンを示し、教授や学生を引っ張るのが使命です。また、高等教育機関のトップとして「博士号」を所持してなければなりません。私はアメリカの2度留学しました。現在も双方の大学から、学長挨拶が届けられます。大学の将来像を示し、そのための具体策、さらには同窓生に理解を求め、支援を求めるという内容です。

田中理事長は相撲部出身、学生時代、また、その後相撲の世界で大きな実績を残した方と拝察します。しかし、相撲の実績と大学経営は別物です。プロ野球ですばらしい成績を残したからと言って球団社長には就任しません。NHKで人気のアナウンサーだからと言ってNHK会長に就任しません。高等教育機関としての経営力、高等教育の高邁なヴィジョンを持ち、それを自分の言葉で語り、職員や学生をリードする能力が求められます。ある私学関係者に質問しました。日大の優秀な博士号を持つ教授たちがなぜ大学改革に意見を出さないのか、出せないのか?すると、日大の待遇が良いので教授たちは現状に満足しているのでは、と説明がありました。また、理事長の体と声の大きさに恐れているのか。大学経営者は「博士号」を所持し、高邁な高等教育のあるべき論の持論を持ち、立派な研究実績を生み出せる、経営力に優れた方が適任と思います。

早稲田大学新総長田中愛冶氏に期待

早稲田大学の新総長に政治経済学部の田中愛冶氏が2018年11月就任しました。就任挨拶の会に出席し、新総長の抱負を聴きました。「世界で輝くWASEDA」をいかに実現するか。研究大学として早稲田大学が目指すべき方向として具体策を拝聴しました。

田中氏は3点で新しいタイプの総長であると自己紹介しました。①早稲田生え抜きでない初の総長、②体育学部出身(空手部)の初の総長、③主要国際学会会長を務めた初の総長です。従来、早稲田の総長は、大学で優秀な成績を収め、大学院から即、助手になり、研究を重ね、ある年になり教授に昇格、そうした中から総長に就任するという道筋でした。①について、田中氏は早稲田大学卒業後、すぐアメリカ、オハイオ州立大学に留学、10年ほどオハイオ州で過ごしました。(私も1969年から70年オハイオ州のウースター大学に早稲田の交換留学生としてオハイオ州で過ごしたので親近感を抱きます)また、これまでの総長は早稲田だけで生活したので早稲田しか知らないある意味でタコツボ型、井の中の蛙型でした。②について、田中氏は体育会の空手部出身です。文武両道型です。空手部の稽古に参加していたのですから、想像ですが、これまでの総長のように「全優の成績かほぼ全優に近い成績)」は不可能だったと思います。③について、世界に多くのネットワークを持っている、世界の大学の事情を知っているという素晴らしい知識を持っています。これから大いに早稲田を改革してほしいと願っています。

鎌田前総長は法学部教授、会社法の権威と聞いております。私が不満と感じたことがあります。スタップ細胞で早稲田出身の若い研究者が大きな社会問題を起こしました。彼女は早稲田大学の博士論文に疑義があると早稲田大学の博士号を取り消されました。そもそも早稲田の博士号審査は後で取り消されるようないい加減な審査だったのか、そうした経緯について一切の説明がありませんでした。鎌田さんはガバナンスの権威者と思っていましたが、説明責任を果たしませんでした。

また、2年前、文部科学省の天下り問題が大きな事件となりました。文科省の大学局長だった人物を早稲田大学教授として迎え入れました。天下り問題が生じ元文部科学省局長出身の教授は即、退職しました。この件についても一切説明がありませんでした。文科省の局長ですから優秀で経験豊富な人物と思いますが教育、研究となると別問題です。その人物自身が学会論文を書いた経験があるのか、また、博士号を持っているのか、単に文科省の大学局長だからということで教授選考がデタラメだったのではと感じました。

大学教授固有の特質と言ったらよいのか、社会事件が発生すると大学教授はテレビなどマスコミで偉そうに解説、お説教しますが、自らのことになるとダンマリ、説明責任を果たしません。鎌田さんはガバナンスの専門家のようですが、ガバナンスを果たしておりません。田中新総長に大いに期待します。早稲田のみならず日本の大学改革をしてほしいです。