23区私大定員増認めず、文科省告示、閣議決定の愚策

8月12日文科省は都内23区にある私大の定員抑制を2018年から実施する方針を決めました。内閣官房まち・ひと・しごと創生本部有識者会議が5月国に抜本策を求めたことによります。課題を列記します。

1 1980年初頭、旧国土庁が工場等立地制限法で23区内の大学立地を認めないことになり、一方、都心にあった大学が郊外に転出、その結果、学生から不評を買い、また、大学経営にマイナスの影響と与え、結果的に都心から大学の追い出しは失敗しました。

2 個人の意思や志向を法律で制限するのは、民主国家ではありません。旧共産国家は首都や大都市での人口流入を抑制するため、同じ国内でもヴィザを発給し、ヴィザを持たない国民が首都や大都市で生活することを厳しく制限し、不評でした。その結果共産国は崩壊しました。一部また残っていますが。

3 欧米の大学は、大学経営者の創意工夫で、学部学科の創設は大学の意志で決定、国(文科省に類する機関はありません)が箸の上げ下ろしまですることはありません。特にアメリカの大学、名門大学は国家の認可でなく、いわば私塾です。魅力ある教育、研究を実施することで世界中から優秀な学生が集まります。各大学で創意工夫し、学生が集まる努力をすればよいことです。私は欧米の大学で勉強しましたが、日本の大学は丁稚奉公、師匠と弟子のような関係の教育では、また、閉鎖的な学校運営です。世界から評価されません。それが分っていない日本の大学幹部、教員に問題があります。

4 私が20歳の時、交換留学で学んだ大学は中西部オハイオ州(大統領選挙で最初の選挙人の選挙が実施されることでスーパーチュウズデイのオハイオ州で有名)のウースターという人口2万人の市にあるThe College of Woosterです。全寮制、学生数は1500人。設立母体はアメリカの主流派の教会、長老派(Presbyterian)です。オハイオ州や周辺の州、あるいは、大都市から学生が集まります。4年間すばらしい自然環境、全寮制の環境で、一般教養を徹底し学ぶということで学生が集まります。4年間一般教養を学んだ後、就職、あるいは別の大学院に進学し、専門分野を学ぶ制度です。そうした地方の小都市に立地する大学が多くあります。日本の地方の大学がそれぞれ魅力ある授業、研究をし、地元のみならず大都市から学生を集める努力をすべきです。秋田の国際大学、新潟の国際大学などは英語中心の授業を実施しています。新潟県立大学もユニークな教育をしているようです。

5 アメリカの大学やヨーロッパの大学を見ると、大都市に多くの大学が立地していますが、一方で著名な大学が小さな地方都市に立地しています。コーネル大学は人口3万人イサカ市、ミシガン大学は人口10万人のアナーバー市。世界から留学生も集まります。それこそ、世界から学生が集まるような教育、研究をすればよいことです。学長の大学運営能力、教授陣の教育力、研究力の魅力が低いということです。同時に、地方の大学が立地する自治体の若者を引き付ける能力に課題があるということです。

6 アメリカにはコミュニティカレッジという短大レベルの公立(市立)の大学が各自治体に立地し、地域の人材供給に貢献しています。全米で約1000校あります。コミュニテイカレッジについては毎日新聞の論説記事(1978年と1980年、神戸市が発行する「都市政策」、旧自治省が発行する「地方自治」に1981年寄稿しましたのでご覧ください。

そうした状況を大都市東京が若者を奪っているというのは言いがかりです。地方の大学が立地する市長、県知事、学長がもっと知恵を出し、汗をかくべきです。結果的には首長や学長はノーアイデアということで、本来は辞表を出すべきです。

最近、現金をもらい職員採用に不正をした市役所、市長、数年前大分県でも教育長が教員採用試験で不正をし逮捕されましたが、そのレベルの市長、県知事、幹部職員がいるような地域は、自己保身のみの指導者では地域の活性化政策を検討することを望めません。数年前、福島県、和歌山県、宮崎県も知事が自己利益のため不正をし、逮捕されました。東京で大学立地制限をしても、そのような地域に意欲ある学生が学びに行きません。就職しようとも思いません。

安倍首相に期待しておりますが、この点については愚かな政策を閣議決定したと反対の気持ちです。人の気持ち(特に若者の気持ち)を法律で強制するのは、19世紀以前に逆戻りです。

 

 

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