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「窓風光」№26 1988年10月号 p3〜5

特別企画
市場が見込まれるアーバンライフのサポート業務
原田 敬美


 東興管理はマンション管理を主な業務としていますが、そのお客様であるインペリアル広尾管理組合理事長の原田敬美さんに貴重な時間を割いていただき、東興管理の荒井専務と対談していただきました。
 「うまくいって当たり前」の地味なメンテナンス業務のあり方や、快適なアーバンライフをサポートするニーズの高まりなど、社内では伺うことのできないご意見をいただくことができました。

マンションライフの徹底した基準づくりを

司会 日頃はお世話様になりありがとうございます。常にお客様から直接ご意見を伺うよう努めておりますが、今日は特にご要望といいますか改善すべき点とか、あるいは管理会社の今後の役割やあるべき姿などについてお話しいただきたいと思います。
専務 理事長さんは建築家でまちづくりの仕事をされている関係から、マンション管理も非常にご熱心ですね。
原田 7年間役員を務めさせていただいていますが、仕事柄、自分の足元をしっかり固めておかなければいけないという気持ちです。
 御社の管理については非常に満足しております。朝早くから清掃の方が来て、丹念に掃除をしていただきまして。
専務 うれしいお話を聞かせて頂きましたが、私共の方針としては、「管理はお客様に満足を買って頂くものだ」をモットーとしています。お客様のマンションに住んでいるつもりで仕事にあたりなさいと常々言っておりますが、至らぬ点も多々あろうかと思います。
司会 どのマンションも画一的に管理するわけにはいきませんね。
原田 ロケーションや居住者の属性によって管理の対応が変わってくるんじゃないかと思います。インペリアル広尾について言えば、定住意識が高く管理にも熱心な方がほとんどです。ですからトラブルが発生する前に問題を解決しようとする。改装しようとする人がおりますと、管理人や御社を通じ、すばやく情報が管理組合に入り手に取るように動きが分かります。そういうシステムで一生懸命やってもらっていますから管理組合としても評価しているわけです。
荒井 私共は24時間以内の報告と48時間以内の対処を心がけていますが、先日もございました。巡回していましたら手摺の工事をしていましてね。体が若干不自由な方でしたので個人的には理解できないわけではありませんが、共有部分でしたのでご説明しました。いずれにしても、管理会社と管理組合の連携プレーが大切です。
原田 理事会としても手摺を付ける理由は理解できますが、いきさつは不動産会社の方が、インペリアル広尾の規約を知らないで、手摺ぐらい何とかなるだろうと安請け合いをして入居させてしまったことにあります。
 入居する方に特殊事情があれば斡旋する側も、それにかなった住居をお探しするのが宅建業者としての良心だと思いますがね。
専務 マンションの居住者としては規約を守ることが当然のことですが、都心であればあるほど実態はそう簡単ではありませんね。
原田 日本の集合住宅の歴史は浅いですからね。昭和30年代までは8割が農村地帯に住んでいましたが、現在は8割が都心に住むようになり、まったく逆転してしまったわけです。わずか30年間のできごとです。ですから集まって住むという意味が頭ではわかっていても皮膚感覚としてはわかり得ません。
 ですから管理会社が大事なわけで、そうした規律を守らないとマンションがみるみるうちにスラム化してしまうということをPRする必要があると思っています。
専務 通達にしても何回も出しますが、なかなかご理解いただけないケースもあります。管理会社としては個人のことには口をはさまないようにしたいと思っていますが。
原田 外国では集合住宅に入居する際の契約が非常に細かく記されています。例えば洗濯する時間帯や洗濯物の干し方に至るまで細かいルールがあります。そうすることによって秩序が保たれるわけでしょう。
 日本ではそうした集合住宅に住む感覚がないとするならば、管理会社が広報誌を出されて、利便性を得るがゆえに、どういう不便をそれぞれが我慢しなければならないかということを啓蒙する必要があると思いますね。
 ちょうど日本の集合住宅の歴史は長いスパンで見たら、今始まったばかりの段階であって、御社がいろいろな障害にあたりながら1つ1つ解決していくことによって、マンション生活の基準が作り上げられていくという、大変しんどい時期ではないかと思います。
司会 心地よく住むための環境づくりをするには、管理会社と管理組合の役員さんの熱意がひとつになって、はじめて居住者のみなさんに伝わり、環境が整うのでしょうね。
 全員が参加して良くしていくんだという意識を持ってもらうためには、本当に熱意だと確認しています。
原田 インペリアル広尾は167世帯もあり、なかなか大変だと思いますが、年に1度でもいいですから、御用聞きではありませんが、「何か不都合はございませんか」と一戸一戸歩いて下さると、顔つなぎができて、何か起こったときに対応しやすいと思います。
専務 管理というのは、これでいいという結論を持ち得ませんが、前向きの管理といいますか、積極的な管理も心がけたいと考えています。
原田 オランダの集合住宅はどは居住者がこぞって窓辺に花を咲かせています。単に通常のコンディションを維持するだけではなく、プラスアルファの管理をしていただけるといいと思います。
 インペリアルマンション・シリーズはいつでも花が咲き乱れているというのはいいですね。


維持管理には積極的な提案を

司会 ところで補修工事の面でも実に計画的に進めていらっしゃると伺っておりますが。
原田 どうしても仕事上の立場で見てしまいます。補修工事をちゅうしょしていますと、時期を逸してしまい結局余計な費用がかさみます。あまりひどくならないうちにやりませんと意味がありません。ある意味で、いつもいい環境に住むためには、それなりの支出を覚悟しなければならないし、その方が得策です。
専務 資産価値も高まりますね。
原田 そうだと思います。管理組合としては維持管理について前向きに取り組む姿勢です。ただし、居住者は管理について素人ですから、御社から塗装は何時の時点でやったらいいという客観的なデータを出してもらい、それを管理組合が判断するというやり方でしょう。
専務 オートロックの工事をお引き受けしておりますが、みなさんの合意を得るにはなかなか難しい面もあったと思いますが。
原田 実は海外生活が3年半ほどありますが、外国では手のひらいっぱいの鍵をみなさん持っています。住宅の鍵を3つ、オフィスの鍵を5つというように安全に対して極めてシビアです。ひきかえ日本人は安全オンチではないでしょうか。
 私のマンションは表通りに面していることから見知らぬ人でもひょっと入れる状況にあること。しかも隣接地にはフランス大使館、米軍施設、在日公館などが数多くあり、突然何が起こっても不思議ではありません。また、設計がユニークで1階、4階、7階にスキップフロアがあり、集合住宅としてはプライバシーの度合いが高く素晴らしい半面、管理を間違えると監視の目が行き届きません。
 そこで、この際オートロックにして自分達の手で安全を守ろうということになりました。
司会 建物もある程度年月を経ますと時代の流れに合せ設備を付加する必要が出てきますね。
原田 管理組合としては知識を持っていないわけですから、御社のほうでいろいろなデータを集めてもらって、組合に提示してもらいたいと思っています。そうすることによって様々なシナリオが考えられることになりますが、最終的にどのシナリオを選択するかは、管理組合の責任で決めればいいと思います。
 日進月歩の技術の発展にも追いついていかなければなりませんし、衛生放送が受信できるアンテナの設置についても、審議をしています。つねに最新の設備をフォローしていくようにしませんと、おそらく数年で陳腐化したマンションになってしまいますから。
 ですから管理会社のサポートといいますか情報の提供をどんどんしていただきたいと思います。


生活をサポートするサービスが求められている

専務 この間、ある住宅情報誌にインペリアル広尾は管理良好の評価を受けていて、うれしく思いましたが、マンションに居住される方の管理に対する意識が高まった現れと受け取りましたが。
原田 管理そのものが商品になりつつある時代ではないでしょうか。当社はこうした管理を行います、という宣伝文句が大見出しになる時代になりつつあると思います。
司会 しかもこれからは共用部分だけの管理ではなく、湯沸器の問題であるとか、排水管の洗浄など専有部のサービスのニーズが高まると思われます。
原田 洗面所が故障した、給湯器がおかしいという時に、個人としてはどこへ頼んだらいいかという情報を持っていませんから、居住者の利便と同時に通常価格より割安で請け負っていただけるシステムを作ってもらえるとありがたいですね。
 専有部分でのサービスということですが、これからのライフスタイルを考えますと、奥様方も仕事をするのがあたりまえになりますね。そうなると、洗濯のサービスとか、カーペットの掃除とか、換気扇の掃除などはニーズが高まると思います。
司会 管理に付加価値をつけた、いろいろなサービスが考えられるような気がします。
専務 付加価値を高めるというよりも、居住者の方が本当に便利になるようなサービスを提供していきたいと思っています。
 例えば、フロントサービス的なこと、リフォーム、室内清掃、レンタカーの手配、車の指定修理工場、海外旅行企画の取次、人間ドックの斡旋などをやっていきたいと考えています。
 新しくできるマンションはそういうサービスを加えていくつもりです。
原田 確かに、引っ越してきた当初は近所にどういった店があるのか皆目見当がつきませんでしたね。偶然知り合った近所の方に何度もたずねたりしたものです。
 これからは良好な環境を保守管理するだけではなく、生活全体を売っていく時代ですね。
専務 何が起こっても東興管理に電話をしていただければ用をたせるということが、今後の使命だろうと思っています。
原田 ニーズを掘り起こしていくと、いろいろな仕事が生まれてきそうですね。新しい付加価値をつけて、より快適なサービス度の高い生活を、住んでいる方に提供していくといいと思います。東京人のこれからのライフスタイルの変化を考えながら提案していくことがポイントのように思えてなりません。
司会 住宅産業に位置する当グループにあって、管理会社の機能がますます重要な役割をになうものと思われます。
 本日は貴重な示唆に富むお話をいただき、ありがとうございました。


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