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「早稲田学報」 1989年2月号 p36〜37

まず臨海部の開発を
原田 敬美 (建築家)


1.東京の都市環境をとりまく動態
 東京は大きな変化の渦の真只中にある。第一は、生産都市から生活都市への変化である。
 東京は日本の高度経済成長を支える拠点であり、同時に生産現場であった。1950年代都市対農村の人囗比は3対7が、1980年には8対2となった。
 急激な都市化は、東京が生産現場、いわば建築の飯場のような仮設建築の都市であった。
 10年前、東京生まれの都民が半数を超え、東京をふるさととする都民が主流を占めるに至った。定住化が進み、生活機能を中心とする都市になりつつある。
 第二は、若者仕様の都市から高齢者都市への変化である。
 都市化の途上で、生産の担い手として地方から優秀な若い労働力が東京に集まった。住宅、交通をはじめあらゆる都市環境は、おのずと若者中心の効率一辺倒であった。
 現在、相対的に年齢が進み、高齢化率は1985年8.9%が2000年に14.3%と高齢化社会へ急激に移行しつつある。
 第三は、日本人のみが住むという同質都市から外国人も多く住むという国際都市への変化である。
 東京は国際的にみると、ニューヨーク、ロンドン、パリ等の都市と比べ特異である。
 東京には日本語を話す日本人しかいない。社会的モラル意識も高い。ニューヨークには様々な人種、そして英語を話さない市民が増加している。麻薬を買う数ドルのために平気で強盗殺人を犯す輩もいる。
 東京は国際金融拠点化しつつある。経済活動をはじめ、文化、教育活動で外国人が急激に増えている。一方で売春、違法出かせぎ等で東京に集まる外国人も増えている。実際社会面を賑わしている。
 金融拠点化に伴い、オフィス需要は、2000年までに三井霞ヶ関ビル100棟分に相当する1500ha程度の床面積が必要とされている。

2.東京の都市環境の現状
 第一は、居住環境である。東京には360万戸の住宅があるが、そのうち90万戸は木賃アパートである。木賃アパートの多い地域は環六から環七沿いである。木賃地区は、道路が狭く、高密度で、公園、広場、緑も少ない。敷地規模は100㎡前後と狭い。
 多くの木賃アパートは、60年代の高度成長期に、地方から東京に集まった若い勤労者のための仮の住いだった。現在多くが建替期を迎えているが、零細な経営、道路、敷地が狭いなどの法律上の問題から建替がむずかしい。
 4m未満の狭溢遭路の占める割合が60〜80%という地区で、最低基準の4mに拡幅整備される速度は年に1%程度である。つまり、4m未満の道路が整備されるまでに100年かかる。
 第二は地価高騰である。
 ここ2〜3年で3倍も高騰した。東京では道路整備を一層進めなければならないが、道路建設の99%が用地費という異常さである。

3.東京の都市ビジョン
 以上述べたような激変に対応した受け皿作りのための大改造が必要である。
 戦略的に、まず臨海部の開発が必要である。臨淘部は都心に近く、広さは23区全体の1/8を占める。既存の港湾地区は、産業構造の変化で新たな活用方法を検討しなければならない。広大な埋立地は、これから白地に線を入れる状態である。
 内陸の都市改造の推進は、地価高騰、権利関係の輻湊等で、事実上不可能に近い。そこで、臨海部から手をつけ、オフィス、住宅、商業、文化、レクリェーション、公共施設等の複合開発を行う。
 また、大規模な改造の必要な所では、道路建設と再開発を同時に行う一体開発をする。現在、法体系が改正されつつある。
 ニューヨーク市の高速道路上に960戸の市営住宅、ベルリン市の高速道路上に500mにわたり集合住宅が建設された例など多数ある。
 その他、都市改造でいくつか実行しなければならない基本方針がある。
 まず、快適環境の創出である。例えぱ、隅田川沿いの大規模工場跡地は、掘り下げて、500隻収容の河川マリーナとして、ウォーターフロント空間を積極的に活用する。
 第二は、高齢化対応で、高齢者と若者が混じって住み、働けるために、すべての駅にエレベーターを設置する。
 第三は、文化環境の創出である。各駅にその駅にふさわしいレリーフや美しい装飾をつけたり、あらゆる公共空間を文化的にする。
 第四は、外国人が気楽で安価で住める住宅を供給し、あらゆるところに英語のサインを表示する。
 第五は、都市の安全性の確保である。安全な都市空間の建設、コミュ ニティや警察力により夜の一人歩きができるまちづくりをする。一方、実現のためにソフト面の戦略も必要である。まず、市民自らの手で計画案が提案できる制度が必要である。
 第二は、都市問題の政治的位置付けが必要である。アメリカでは、都市問題は国家的危機としてとらえられている。日本では政治家の大半が農村を基盤にしている。これだけ都市問題が深刻化しているにもかかわらず不毛なイデオロギー論争にあけくれし、国の補助金をいかに地元にばらまくかの関心しかない。都市の健全な発展が国家を繁栄させるという意識が必要である。都市は、そこに住む人々の文化や感性を反映する。先に述べた都市改造により誇れる東京を創りたい。

(昭47建築・昭49工研建)

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