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「建築雑誌」(日本建築学会誌) 2003年1月 p22

設計者選定、首長は こう 考える
プロポーザル方式へのプロセス
原田 敬美 (東京都港区長)


 港区は設計発注に際し、入札方式を採用している。例外的に、区庁舎の設計発注で昭和57年指名コンペ方式を、また、箱根大平台保養施設で平成6年プロポーザル方式を採用した。良質な公共施設の創出、公正な公共事業の執行、WTO(世界貿易朧閲)のサービス(建築設計、会計、法律、医療など)貿易自由化の方針、それを受けて国や東京都の動きから、公共施設の設計や工事の発注について改善の必要性が生まれた。平成13年高輪台小学校でプロポーザル方式を採用した。平成14年旧桜川小学校跡地福祉施設計画・建設事業でプロポーザル方式を採用し、事業者を選考中である。港区は平成13年に建設工事等入札・契約制度検討委員会を開催し、そのなかで、国や東京都他の自治体の動向を踏まえ、次の四つの基本的な方針を作った。①情報公開、透明性の確保、②談合排除、競争性の確保、③不良工事の排除、適切な施工体制の確保、④入札・契約事務の合理化、省力化である。そのなかで新規または全面改修を行う、技術的に高度または個性が重視される工事の設計・建設コンサルタント等の業務契約はプロポーザル方式とすると定めた。設計者、コンサルタントに求められるのは、より良い公共施設を創り出すため、担当者の能力、経験、アイデア、意欲であり、また発注者が意図しているものと提案内容との相性も重要である。適切な人材を選ぶのに、お金の多寡のみで決める入札方式は不適当な場合がある。
 良質な公共建築を作り出している自治体の例として、アメリカ・インディアナ州コロンバス市という人口3万人の地方都市を思い浮かべる。コロンバス市は公共施設を全米の指導的立場の建築家に依頼し、公共建築で街を美しくするをいうことと適切な設計者を選ぶということのある種のモデルである。
 世界に目を転ずるとWTOの取り決めのなかで公共施設設計活動の自由化がある。ミュンヘンオリンピックスタジアムの設計で有名なフライ・オットー氏は息子と2人で、造園設計で有名なローレンス・ハルプリン氏は奥さんと2人で事務所を運営している。仮にこうした方々が港区の公共施設の設計に関心を持ったとして、その人物の能力や経験ではなく、事務所の規模や入札金額といった従来の方式で有能な方を港区が排除したら、その方の能力が生かされなくなってしまうだろう。
 従来の入札では、能力、経験を考慮しても、価格の低い者が設計の仕事を取り、本当に良い公共施設が創られるのか問題である。また、時々批判されるように、ダンピング入札、談合の間題がある。この二つは一体の恐れもある。つまり、建設会社が設計事務所にタンピング入札させ、談合で工事を受注することも考えられる。そうなると本来公共施設が持つべきデザインの質はまったく無視される。良質な公共建築を創るということと、公正な選定の手続きについて、従来から建築学会や建築家協会などから提言があったように、そのプロジェクトにもっとも相応しい人を選ぶという考え方が大切と考える。
 港区が平成13年高輪台小学校設計者選定でプロポーザル方式を採用したところ、議会でいろいろと議論がなされ、港区がプロポーザル方式を採用したことを理解してもらうことに時間がかかった。 専門家の多くがプロポーザル方式と簡単に言うが、行政の現場では簡単でないことをおわかりいただきたい。制度を変えるために専門家は政治に関心を持ち、建築学会を中心に専門家団体による首長や議会への要請活動などを期待したい。
 また、設計活動は、専門家としての個人が中心となるべきと考える。とくに今日のように経済が厳しい時代、プロフェッサーアーキテクトは事業を自粛すべきで、大学研究者は設計者への技術支援に徹するべきである。


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